流星光底

「はは、酷い顔だ」


 お前は刀を固く握り締めて、地面に這い蹲る俺の前に立っている。

 眉根を寄せ、下唇を噛み、膿んだような表情かおで。お前は俺を見下ろしているのに、何だか俺が御前を見下ろして居るみたいだ。

 星々が姿を隠してしまってただ暗いだけの夜空。辺りは静まり返り、近くのせせらぎの微かな音が聞こえてくるようだ。

 俺はお前の向こう側にいる、お偉方をる。


 此奴は貴様なんぞが縛っていい奴じゃねェよ


 視線に気がついたお偉方は俺を指さして、「はやく!」とお前に向かって叫ぶ。


 最期に星が見てェなァ


 俺はお前と叢に座り、天から降る流星を見詰めながら空想ゆめを語り合った。


 お前は一歩踏み出して、俺の背後へと廻る。

 

 お前が息を飲んで刀を振り上げた瞬間、俺は夜空を見上げて「あ、」と零した。この声はお前には聞こえちゃいない。

 天から一筋の流星が降ってくる。星の輝きが俺の瞳に反射する。

 お前は落ちる流星に共鳴しながら、俺の首許へと刃を運ぶ。お前の頬を伝う雫と、銀刃の閃光が、まるで流星のようだった。

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