第43話 Aボタン

列車から降りるとすぐ目の前に町があったので、魔王の城について知っている人がいないか話を聞くことにした。


町を入ってすぐのところの宿屋に入る。

料理を注文するついでに、魔王の城を知らないか聞いてみた。


「あんた、もしかしてロンバルドさん家の隣に建った、アレのことじゃないかい?」

女将さんが、奥にいた亭主に言った。


「ああ、そーいやーそんなこと言ってたなぁ。うん。確かに、ロンバルドさん家の隣に建ったアレのことだ。」

「なんかわからんが、あいさつもなく急に建てられたあげくに、やたらいろんな魔物が出入りするわ、夜中まで大騒ぎするわで、迷惑してるって話だったよ。」

「それに、アレのせいでリビングが日陰になっちまったこともえらく怒ってたな。洗濯物が乾かなくなった、って。向こうの敷地の大きな木の枝も随分ロンバルドさん家の庭にせり出してるようなんだが、何度言っても切ってくれないらしい。」

「それにゴミは決められた日に出さないし、町内会費を取りに行っても出て来やしない。路上駐車も増えたみたいで、何度もお役人を呼んだらしいけど、らちがあかないって。」

「あげくに弁護士に相談しても、相手が相手だから泣き寝入りするのがオチだって言われたらしい。あんたら勇者だか魔物だかしらんが、話つけてもらえたら、ロンバルドさんも喜ぶよ。」



それは本当に魔王の城のことなのか?



「ああ、そーいやーそんなこと言ってたなぁ。うん。確かに、ロンバルドさん家の隣に建ったアレのことだ。」

「なんかわからんが、あいさつもなく急に建てられたあげくに、やたらいろんな魔物が出入りするわ、夜中まで大騒ぎするわで、迷惑してるって話だったよ。」

「それに、アレのせいでリビングが日陰になっちまったこともえらく怒ってたな。洗濯物が乾かなくなった、って。向こうの敷地の大きな木の枝も随分ロンバルドさん家の庭にせり出してるようなんだが、何度言っても切ってくれないらしい。」

「それにゴミは決められた日に出さないし、町内会費を取りに行っても出て来やしない。路上駐車も増えたみたいで、何度もお役人を呼んだらしいけど、らちがあかないって。」

「あげくに弁護士に相談しても、相手が相手だから泣き寝入りするのがオチだって言われたらしい。あんたら勇者だか魔物だかしらんが、話つけてもらえたら、ロンバルドさんも喜ぶよ。」



オレは咄嗟にキルトを見た。

「ごめん、うっかりまた話しかけちゃった。」

「いいけど、ムービーじゃないからスキップないし、気をつけろよ。」

「うん。」



「ああ、そーいやーそんなこと言ってたなぁ。うん。確かに、ロンバルドさん家の隣に建ったアレのことだ。」

「なんかわからんが、あいさつもなく急に建てられたあげくに、やたらいろんな魔物が出入りするわ、夜中まで大騒ぎするわで、迷惑してるって話だったよ。」

「それに、アレのせいでリビングが日陰になっちまったこともえらく怒ってたな。洗濯物が乾かなくなった、って。向こうの敷地の大きな木の枝も随分ロンバルドさん家の庭にせり出してるようなんだが、何度言っても切ってくれないらしい。」

「それにゴミは決められた日に出さないし、町内会費を取りに行っても出て来やしない。路上駐車も増えたみたいで、何度もお役人を呼んだらしいけど、らちがあかないって。」

「あげくに弁護士に相談しても、相手が相手だから泣き寝入りするのがオチだって言われたらしい。あんたら勇者だか魔物だかしらんが、話つけてもらえたら、ロンバルドさんも喜ぶよ。」



しまった…

言ったはしから、今度はオレが前に進もうと思って、間違って話かけてしまった。

話が長い時に限ってやってしまうんだよな…



「ごめんキルト。今度は慎重に、何にもさわらないように前に進むから。」

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