第42話 無理してしまった

違う意味でビクビクしていた。

今までもこういう綱渡りは度々あった。

ただ限られた方向性だった。

でも、これはあまりに老若男女問わずケンカを売るようなもんだ。


とにかく、寝てやり過ごそう。

いや、寝たらダメなんだっけ?




目を覚ますと、故郷の村の自分の部屋にいた。

上下スウェット姿のオレは、どうやら寝落ちしてしまってたようで、テレビの画面がつけっぱなしになっている。


ああ、復興の呪文を紙に書き留めたところで力尽きたのか…


突然、部屋のドアが開き、すごい音とともに、ハハーノソージキーが入ってきた。

ハハーノソージキーはそこら中の物をなぎ倒しながら進んでくる。

ゴンっ!

大事なものにすごい勢いで当たった…

「あ!」

そう言った時にはもう全てが終わっていた。


いや大丈夫だ。

オレは復興の呪文を唱えた。


しかし何も起こらなかった。


どこかで呪文を書き間違えてメモしたんだ…


これの前は、きっと寝落ちする前だから…



気が遠くなる思いでいたら、いつの間にか復興の呪文なんてものはなくて、丁寧にマップにセーブポイントまで書かれている。

どこで休めるかまで書いてある親切設計だ。


こんなに楽になって、いいんだろうか…

次に何をしたらいいのか、ナビっぽいものまでついている…




「起きて、アイザック!起きて!」

キルトの声で目を覚ますと、列車の中にいた。



夢だったのか…

ずっと見ていたい夢だったのに…



「この列車、何か変だよ。何かいる。臭いがするんだ。」



寝てる場合じゃなかった。

何とかして黄色いロン毛の人を避けなければ。絶対に会うわけにはいかない。



「ああ、ねぇ、さっき黄色い髪の人が、『手伝って』って、これ置いていったよ。はい、アイザックの分。」

そう言ってキルトはオレにスプレーボトルを渡してきた。

スプレーボトルには、「悪鬼滅菌」と書いてあった…


「このスプレーの中身は、高純度のアルコール77%以上でできてるから、除菌効果があるんだって。醸造用のアルコールからできてるから食品にも使えるって言われたよ。」



まだ序盤だ。

2話でここまでしか進んでいない。

魔王=名前を言ってはいけないあの人にするつもりなんだろうか?


大丈夫なんだろうか…



「でも、あの黄色い髪の女の人、長細い黒い帽子かぶってたんだけど、なんで落ちないのか不思議だった。服も全部真っ黒だった。」



ん?



「一緒にいた男の子は、タツロウって呼ばれてたけど、ずっとクリスマスソング歌ってたんだ。」



んん?



『この列車の終着駅は、惑星メートル。』


車内放送が流れた。



違う意味で違う!


「キルト、降りるぞ。やっぱ列車の旅はダメだ!」

「え?何?」

「ビジュアル以上は知らないから無理なんだ。」

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