第41話 もちろん全巻カバー付きで暗所に保管だ

キルトの様子が変だった。


「キルト、なんか元気ないけどどうかした?」

「あー、うん、ちょっと疲れてるかもしれない。」



今までキルトがこんな弱音を吐いたことなんてなかった…

もしかしてずっとオレの特訓で疲れたんだろうか?



「『こっち亀』と『パタパタリ王』を一気読みしたからかな。」



そっちかよ。



「でも、あんまりゆっくりもしてられないんだ。」

「ああ…オレも何となく気がついてた。最近村の近くにも強い魔物が出てくるよな。それって魔王の力が…」

「北極夏彦さんの新刊買ったのにまだ読めてないんだ。道具屋の人が、あれは読み終わるのに一日かかるって言うから、どこで時間取ろうかと考えたら…」

「キルト、わかった。よくわかった。だったら、たまには列車に乗らないか?列車の中なら本も読めるし。それで、魔王のいる世界の果てをめざそう。」

「アイザック、今時は電子辞書だから、ネット環境さえあればどこでも読めるよ。」

「キルトはアイテムボックス持ってるんだから、そこに入れときゃいいじゃん?」

「でも、アイザックが全部カバーつけるから。透明なのじゃなくて紙のやつ。どれが何巻か、いちいちページ開かないとわかんなくて、探すの面倒なんだよ。」

「と、とにかく列車に乗ろう!」



列車なら馬みたいに魔物のキルトを怖がったりしないし。

どうして今まで気がつかなかったんだろう?



宿屋の主人に一番近い列車の駅を教えてもらった。



切符を買ってホームに向かっていると、動物の格好をした怪しい奴がいた。

てっきり魔物かと思って身構えたら

「あれは人間だよ。」

とキルトに言われた。



やっぱりオレには魔物と人間の区別がつかない。



「この列車、無言列車って言うんだね。」

キルトが言った。



ぶっ込んできた!!!!!

いきなり列車出てきたの怪しいとは思ってたんだよ…

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