第37話 てっきり…
王様が言ったとおり、お城を出て少し北へ進むと、四角い建物があった。
中に入ると、そこはまるで学校のようで、いくつもの教室がある。
ひとつひとつ中を覗いて行くが、檀上の上には何も置かれておらず、魔物も見当たらない。
一番端っこの教室の前まで来た時、中から声が聞こえた。
そっと覗くと、教室の中には一目で魔物とわかるやつらがうじゃうじゃ席に座っていた。
壇上に何か置いてある。
どうやらミラーの鏡らしい。
壇上のところにいる、眼鏡をかけた魔物が声を荒らげる。
「わたしの名前は、風門きみかです。この中で魔王にあこがれている者はいますか?」
それを聞いて、大半の魔物が手をあげた。
「今、手をあげてる者たちには、この『転居届』を書くことを勧めます。そんな者たちを立派な魔物にするつもりはありません。むしろ、魔王に反旗をひるがえしたいと思っている者たちの方が、魔物には向いています!」
檀上って…そういうことかぁ…
オレががっくりとしていると、キルトがいきなり教室に入って行き、檀上のミラーの鏡をとってきた。
その時、風門きみかと名乗った魔物は、全く動じることもなく、キルトに言い放った。
「あなたのような魔王を待っている魔物がたくさんいます。」
キルトは振り向くこともなく、
「アイザック、帰ろう。」
と言って、何事もなかったかのようにミラーの鏡を持って先に歩いて行った。
オレはただそれを追っかけた。
あまりにもネタがアレすぎて、キルトを追っかける以外、何のフォローもできなかった。
城に戻ると、オレは少しわくわくしていた。
「王女様って美人かな?」
ミラーの鏡で元の姿に戻った王女はどんな感じなんだろう?
キルトがミラーの鏡を王様に渡すと、
「おお、これじゃこれじゃ!」
そう言って、王様は自分の姿をミラーの鏡に映した。
王様は立派なチワワになった。
「ああ、よかった!ありがとうございます!王様が元の姿にお戻りになりました!さすがは勇者様です!」
兵士が喜んでキルトにお礼を言った。
…そっちか。
呆然としているオレにキルトが言った。
「てっきりわかってると思ってた。」
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