第33話 決意?
魔王がいなくなったら、「勇者」は用なしだ。
その後は誰も気にかけなくなるはずだ。
毎日昼間から酒屋に入り浸って、何もせずだらだらと過ごしても、誰も何も言わないに違いない。
朝方に寝て昼過ぎに起きるのも悪くない。
せいぜい「あの人昔は『勇者』だったのにねぇ」って言うくらいで、もう誰も何も期待しないはずだ。
魔王を倒すという結果を出してこその、その後の落ちぶれ具合は、もうみんなどんびきレベルに違いない。
何やったって、もう誰もオレを「勇者」って目で見ないはずだ。
魔王を倒すのも悪くないんじゃないか?
そう思えてきた。
でも、そうしたらキルトは?
オレがめずらしくいろいろ考えていると、キルトの方が話かけてきた。
「おれ、実はアイザックと離れていた時、オルハルコーン探しに行ってた。」
「え?」
「魔王を倒せる伝説の剣の噂は前から知ってたんだ。それでオルハルコーンが必要なことも。だから、アイザックに魔王を倒せる伝説の剣で魔王を倒して欲しくて。」
「なんで…」
「おれさ、ずっとずっと神の宿る祠でのこと気になってたんだ。魔王さえいなければ、あんなやつもいなかったはずで、そうしたら村の人たちも悲しい思いしなくて良かったはずなのに、って。おれは一生魔物でしかないけど、人間の役に立つことをしたい。」
なんだよ…
オレが落ちぶれる方法とか自分のことばっか考えてる間に、魔物のキルトの方がみんなのこと考えてたのか。
オレ、全然だめだめじゃん…
「魔王を」
キルトが言った。
「倒しに行こうか。」
オレが続けた。
すげぇ、まじめな展開になってきた?
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