第32話 落ちぶれた鍛冶屋
結局、キルトとオレは鍛冶屋の男の家に連れて行かれた。
「オレも昔は結構やんちゃでな、魔王を倒すんだ、なんて旅に出たのよ。」
え?そこから話始めるんだ…
「それで、まぁいろんな国や町を旅しながら仲間を増やして、馬車を手に入れたり、船に乗ったり、魔王を倒せるレベルになるまで世界中を旅してたんだ。そんな中、仲間になった子がよ、かわいい子でさ、回復魔法を得意としてたもんだから、こりゃ助かると思って、経験値上げるのを優先的にしてたわけよ。」
こいつの話、まんま「勇者」のストーリーだ。
「オレは仲間になった彼女を大切に大切に成長させてたんだ。それなのに、まさか途中で死んじまうなんて!彼女の名はエアリ…」
「待ったーーーっ!!!!!!いい、名前は出さなくていい!」
「だが、ファイナル…」
「それも出すな!わかってる。わかる人にはわかってるからいい。」
「そこまで言うなら…」
鍛冶屋の男は納得していなかったようだが、どうにか最後まで話し終えることをとめることができた。
最近危ない橋を渡りすぎている。
「とにかく、そんなんで一気に落ち込んでさ、でも、魔王のとこには行ったんだ。だが、戦ってみてわかった。到底オレらの叶う相手じゃないって。あいつ、オレらが持っていた回復草や毒消してくれる草とか、持てるだけ持ってたのを、攻撃の度に全部消し去っていくんだ…持ってる数の多い順に。」
きた…
こいつの話はどうもさっきからギリだ。
これ以上は無理だ。
「わかった、昔話はもういいよ。」
「そうか?まぁいいけどよ。そんなこんなで、自分の無力さに気づかされて、もう何もかも嫌になっちまってな、見ての通りの落ちぶれた飲んだくれになっちまったわけよ。いきがって村を出て行ったのに、結局目的も果たせなかったもんだから、村のやつらはみんなオレのことを相手にしなくなった。」
なるほど…ここはためになる話だ。
「オレは飲んだくれではあるが、鍛冶屋の腕は衰えていないって自信がある。オルハルコーンさえあれば、魔王を倒せる伝説の剣を作ってやるよ。」
あるあるだ。
「どこにあるかわからないもの」を探す旅。
これでこの世界をくまなく船とかの横幅に合わせて上から下からいくんだよな…
(「上」とか「下」って何かはふれて欲しくない。)
「オルハルコーンだよね?」
キルトが言った。
「キルト、知ってるのか?」
「うん。それなら持ってるから。待って。」
そう言うとキルトはオルハルコーンをアイテムボックスから取り出した。
「おう!それだ!それさえあれば、魔王を倒せる伝説の剣を作ってやれるよ!」
鍛冶屋の男は、キルトからオルハルコーンを受け取った。
「ちゃちゃちゃちゃん。」
しまった…思わず口ずさんでしまった…
あれ?
待て。
待てよ。
キルトはなんでオルハルコーン持ってんだよ?
そんなことより、キルトは何でアイテムボックス持ってんだよ?
それに、オレ一回も魔王を倒せる伝説の剣欲しいって言ってないのに、作る方向で話すすんでるじゃん。
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