第29話 恐怖が支配する「村」

キルトと再会して、また2人で歩いていると村があった。


村に入ると、すぐに1匹の犬が前を横切った。こちらを見て一回「ワン」と鳴いた。

その後、長くて白い髭を蓄えた老人が杖を持って現れた。

もう片方の手には牛をひいている。

「ようこそ、旅のお方。ここは…村じゃ。」



肝心の村の名前が聞き取れなかった。

でも、今まで訪れた村の名前も覚えていないし気にしない。



なぜかこの村では、真ん中に井戸がある。

その井戸のまわりを2人の子供がくるくる回って遊んでいた。

子供と子供の間には入らない。



なぜなら、オレは井戸には近づきたくないからだ。



キルトは井戸の近くまで行って、中を覗いていた。

「ねぇ、井戸の中に何かきらきら光ってるものが見えるよー。」

と言ったが、無視した。



井戸はダメだ。


来るんだ。

きっと来るんだ。



「としおー、そろそろ帰っといで。」

井戸の近くの家から母親らしき人が出て来て、井戸のまわりで遊んでいた男の子を家に呼び戻した。



「としおくん」までいるのか?この村には!


しまった!

そもそもここは「村」だ!

最初に犬がいた。しかも鳴いた!

そして、十戒を思わせる老人。これはかなり苦しいが…

最後に牛!


「村」もやばいんだ。



キルトを探すと、キルトは横たわっている何かに話しかけていた。



返事なんかあるわけない。

それって、「屍(しかばね)」ってやつじゃん。

見てわかるだろ?

見てわかるのに、話しかけても返事はないんだよ!



オレはキルトをひっぱってこの恐ろしい「村」を後にした。

スマホを落とさないように気を付けて。

スマホを落としただけで、とんでもないことが起こるからな。


…スマホは持ってなかった。

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