第21話 恐怖のミニゲーム

ユーガスの家を後にしてしばらく北へ向かっていると、「ミニゲーム場」という看板が目に入った。


「何これ?」

キルトが不思議そうに言う。

「これは、いいんだよ。無視だ。」

そう言って先に進もうとした時、「ミニゲーム場」と書かれた看板の奥から1人の男が出て来て言った。

「おや、お兄さんたち、ゲームやってかないかい?」


突っ立ってるキルトを掴んで引っ張って行こうとしたら、聞いてもいないのに男が話し始めた。

「ここにあるチョコレート色のボール、通称チョコ色ボールに乗って、競争に勝てたらいいもんが賞品にもらえるよ!」


「アイザック、やらないの?」

「やらない。」



こんなやってもやんなくてもいいことは極力やりたくない。



「だいたい、穴に落ちないために助走してジャンプしつつも、前から来る敵を避けるとか、倒すとか無理だから。そもそも土管と土管の間の亀みたいなやつ間違って蹴っちまったら、もうそいつら止まんないから。どうすんの?って話だよ。」


「…アイザック、それ何の話?」



この際言わせてくれ。



「キルト、お前は知らないだろうから言っておくけど、こういうのは、村や町に行く順番を間違えた状態で参加すると、この世界が終わるんだ。魔王よりも恐ろしいと言われているハハーノソージキーが急にぶつかってくるより恐ろしいことが起こるんだ。」

「ハハーノソージキーって何?世界が終わるって?」

「信じられないのはよくわかる。だけど本当なんだ。たかが順番を間違えただけで、大量の虫がどこからか現れてこの世界の時をとめてしまう。」

「虫が世界の時をとめる…終わっちゃったらその後どうなるの?」

さすがのキルトも動揺している。

「旅を記した、要は日記みたいなもんかな?それを、世界を統べる神に送り届けて、それを世界を統べる神が吟味して、虫を取り除いてくれるんだけど…すっげ時間かかるから!」


オレの愛読書「勇者の旅あるある」書かれていた。


「アイザックは書いてるの?それ。」

「いや、書いてない。」

「書いてよ。」

「いやだよ。面倒だから。キルトが書けば?」

「字、書けない。」

「…ごめん。」

「それに、いつか1人になった時、それ読み返してアイザックのこと思い出す。」

「オレ、死んだ程になってんじゃん。」

「だって、おれの方が絶対長生きだよ?何にもなかったら数百年とかいけるし。」



まじか…



「でも、字、書けないってことは読めないんだろ?」

「アイザックが教えて。」



日記を書くなんて、続かない自信しかない。



でも…



キルトが1人で、オレのこと思い出して読んでる姿を思い浮かべたら…



書いてもいいかと、ちょっとだけ思えた。



「毎日オレに書くように言わないと、絶対に書かないからな!」

そうキルトに言った。

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