第19話 洞窟

ステラの町を後にしてから、特に何か当てがあるわけでもなく、川沿いをひたすら歩いた。

なんだかテンションもダダ下がりだ。

こんな時魔物の群でも出てくれれば少しは気が紛れるのに…

そんな風にすら思ってしまう。


そんな時、うってつけの洞窟を見つけた。


「あー、オレちょっとあそこ入って来るわ。」

軽く言うと、

「そこ、向こうの対岸に続いてるみたいだから、あっちで待っとこうか?」

と、キルトが言った。



対岸って、全然見えねーけど…

まぁ、もういい加減驚かなくなってきた。

キルトはめちゃくちゃ視力もいいらしい。



「あ、じゃ、また後で。」

「うん。」

そう言うと、キルトはすぐに見えなくなった。


オレはひとり洞窟に足を踏み入れた。


そして即効後悔した。

魔物いすぎだろ…


それでも、キルトに会うにはもう向こうに行くしかないから、仕方がなく前に進む。

ちょっと歩いただけですぐに魔物が現れる。

これまで楽してきた分きつい。


しばらくすると、魔物に襲われている風の人間を見つけてしまった。


目の前で襲われているのを見殺しにするわけにいかず、人間を襲っている風の魔物を倒す。


「ありがとうございます!勇者様!」


やっぱこうなるよな。


でも、そもそもこいつ、オレだって苦労してるのに、なんでこんなとこに無傷でいんだよ。

しかも、絶対魔物は襲ってなかったよな。

それでも仕方がなくその人間、ユーガスという男を連れて、洞窟をぬけた。



洞窟を出ると、約束通りキルトが待っていた。

キルトを見て、ユーガスがさけんだ。

「ま、魔物!!」



やばっ。



オレは咄嗟に、

「なんと!魔物が仲間になりたそうにしている!仲間になりたいのか!よし、仲間にしてやろう!ちゃちゃちゃちゃんちゃちゃん!」

と叫んだ。


結構長い沈黙が続いた…



何がダメだった?

やっぱBGM自分で言ったのがまずかったのか?



やがて、

「魔物を仲間にするなんてさすがです、勇者様!!驚いて声も出ませんでした!」

ユーガスが言った。

「仲間かぁ。」

キルトはうっとりとしている。



大丈夫か?こいつら…

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