第17話 結界

さっさと「神の宿る祠」に行きたいらしく、キルトはオレをつかんで祠がある山まで飛んで行った。

そのまま祠まで行くのかと思ったら、途中の、あの分かれ道あたりで降りた。


「結界がはってある。」

そうなのか?

オレは全く問題なく道を先に進めた。

「魔物が入れない。」

なるほど…

「どうすればいい?」

「近くにこれを作ってるやつがいると思う。」

「わかった。そいつをやっつければいいんだな?」

オレはずんずんと道を進んだ。

「そいつ強いと思うよ!」

キルトが何かさけんでいたけれど、もう聞こえなかった。


しばらく歩くと、ちっこいチワワみたいな魔物が現れた。

これ、じゃないよな?


あごの下をさわったら、ギャウギャウ言って抱っこすらさせてくれない。



ん?

慣れてないのか?



かたくなにへそ天を嫌がり、爪も切らせてくれない。

尻尾のようなものをつかんでもノーリアクションのくせに、前足をさわるととんでもなく攻撃してくる。


甘噛みだよな?

こっち結構ダメージ受けてるけど、甘噛みだよな?


攻撃が通用しないので、餌付けに切り替えてみる。

おやつを与えると指まで食べられそうになった。


おやつ攻撃と、甘噛みされた自分への回復魔法、これらを何度も繰り返して、チワワみたいな魔物はようやくおとなしくなる。

しかしこれでは、このチワワみたいなやつは太ってしまうばっかりだ。


思い付いてブラッシングの魔法をかける。

とてつもなく狂暴性が増した。


思わず

「やめろよ!」

と、さけんでしまう。

すると、なぜか魔物がこちらの言うことを聞いて攻撃をやめた。

大きな目でじっとこっちを見ている。

試しに

「結界解けよ。」

と言ってみる。


どうなんだろう?

言うことを聞いてくれたんだろうか?


やがてチワワのような魔物は走り去っていった。


すぐにキルトがやってきた。


どうやらコマンドは効いたらしい。


もっとちゃんと修行しなくちゃダメだな…

あやうくまともなことを考えそうになった。



休む間もなく、ボスキャラがいる祠へ向かう。


祠の入り口で一息つこうと思ったら、そんな暇も与えられず、いきなりキルトが祠の扉を開け放った。

頼むからちょっと間をとってくれ。

中には、でっかめの魔物がどっしりと構えていた。周りには大小いろんな魔物がわらわらといる。



まじか。

いきなり戦闘か…

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