第16話 カノンの行方

ステラの町は、これまで訪れた中では1番大きな町だった。

足を踏み入れて、どこか活気がないというか違和感を感じる。


姉さんが働いているといっていた宿屋は町の中心にある、そこそこ大きなところだった。

中に入り、宿屋の主人にカノンのことを聞く。

「ここにカノンという方が働いていると聞いたのですが?」

店の主人は、

「し、知らない。そんな人は見たことない。」

と、明らかに嘘をついている。

横にいた女将さんも、何か知ってますオーラをバシバシ発しながらも黙ってうつむいている。

何かあるのは丸わかりだ。

でも、何も話したがらない。



ああ、これは町中の人に話しかけまくって、謎めいたことを言う人を探さなきゃいけないやつだ。

でもって、そいつに「どこそこの老人なら知っているはず。」とか言われて、どっかの町やら村に行かなきゃいけないんだ。

何で情報を持ってるやつっていうのは別のとこに住んでるんだよ。



これ以上何を聞いても無駄だとわかったので、宿屋を出た。

手当たり次第、その辺を歩いている奴らに話しかけようとした時、宿屋の影から、女の子が声をかけてきた。


「勇者様、お話を聞いていただけませんか?」


見たところ、12、3歳くらいの子だったが、このくらいの年の子にも「勇者」は認識されるらしい。


「わたしは、この宿屋の娘で、エレンと言います。実は、この町は呪われているのです。3か月に一度、この先の山にある「神の宿る祠」に、生贄を捧げないと、魔物が襲ってきて、村の人を手当たり次第食べてしまうのです。生贄は20歳以下の女の人でなくてはいけなくて、次はわたしの番でした。でも、うちで働いていたカノンさんが、わたしの代わりに行ってくださって…」


違和感の正体はこれだったのか。

町に入って、若い女の人を1人も見ていない。

圧倒的に男ばかりで、その中にちらほら年配の女性がいるだけだった。


「それはいつから?」

キルトが奇妙な質問をした。

「ちょうど3年前からです。」

「そう…」

何か引っかかることがあるようだった。

「それ、何とかするよ。」

「本当ですか!」

女の子の顔がパッと明るくなる。



やっぱそうなるか。

まぁ、いいけどさ。



その「神の宿る祠」に向かう前に、この町で買える1番いい武器と防具を揃えた。

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