第12話 盗賊の森

「これ、絶対いらなかったよね?」

水門の鍵で扉を開けながらキルトが言った。



まぁ、確かにあのまま飛んでりゃこの水門なんて軽々越えられたよな。



森に入ると、いきなり盗賊たちが現れた。

魔物じゃないから、普通に戦いを挑んでくる。


剣を構えたキルトが言った。

「こいつらも倒しちゃっていいのかな?一応人間だよね?」


そう言われてみれば、悪党とはいえ人間だ。

倒してしまったら何だか後味悪そうだ。


「そーだなぁ。倒さずに済むいい方法があったら…」

言い終わる前にキルトが呪文を唱えた。

盗賊たちは眠ってしまった。



こいつ、魔法も使えるのか…



キルトは会う盗賊、会う盗賊、魔法で一気に眠らせていく。

かからないやつがいないことからも、キルトの魔力はめちゃくちゃ強いことがわかる。


あっという間に森の奥の小屋に辿り着いた。

待て、と言う前にキルトは小屋のドアを開けていた。



中には、突然の来訪者に驚いている、頭と思われる男と、その陰に隠れるように女性の姿があった。

「クルガさんから盗んだサファイアを返してもらおうか。」

キルトが言うと、女性が

「待ってください!盗んだなんてそんな…」

と言って泣き出した。

男は、攻撃を仕掛けて来ることもなく、そんな女性を支えている。



なんだ?

なんか変じゃないか?



「話を聞いてください、勇者様。」

男が言った。



やっぱり初見で「勇者」ってわかるのか…



「私たち2人は愛し合っているのです。」



え?

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