第6話 真の姿

キルトと一緒にいて気がついた。

マジでこいつとんでもなく強い。


大体魔物は自分より弱いやつに攻撃を仕掛けてくる。

逆に、強い相手に遭遇すると逃げ出して行く。


キルトと一緒にいると、ほとんど魔物に会うことがない。

流石に森に入ると出くわすこともあったけれど、キルトが一瞬でやっつけてしまうので、オレは剣を抜く隙すらなかった。


何度か旅人も助けたが、みんな「勇者」のキルトに感謝し、疑う者は1人もいなかった。

キルトは、すごく嬉しそうだった。


「あのさ、ホントにオレ何もしてなくて、全部キルトにやらしちゃってるんだけど、いいの?」

「何もしないのが望みでしょ?」

「そう、だけど。」

「おれは、感謝されて嬉しい。お互い希望が叶ってるからいいんじゃない?」

「うん…」



キルト、魔族なのにいいやつだな。

魔族=全部悪い奴、って誰が決めたんだろう?



「なぁ、お前って、元々そういう姿なの?」

「違うよ。例えば...」


そう言うと、キルトは女性の姿になった。


「な、な、なんで…」

「アイザック、じっと見てたでしょ?さっき助けた商人の娘。こういうのにもなれるけど。この姿でいようか?」

「い、いや、ダメだ。」

「あ、そう。」

そう言って、キルトは元の姿になった。

「その姿は元は誰なんだよ?」

「...誰だっけ。忘れた。本当の姿も見せようか?」

「いい、いい。」

「そう。じゃあ、このままということで。」



まぁ、どんな姿でも、キルトはキルトだよな。

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