第4話 旅立ち
「…そう言う訳だから、みんなもわかって欲しい。」
村人たちは誰も言葉を発しなかった。
とにかくこの村を出て、誰もオレのことを知らないところに行って、勇者にくっついて旅をする魔族の立ち位置を確保したい。
その一心で、
「魔王を倒しに行く旅に出ようと思う。」
などと言ってみた。
まぁ、誰も賛同しなくとも、こっそり村を出るつもりではいたけれど…
「さすがは勇者殿。」
最初に口を開いたのは、そもそもの元凶たる神父様だった。
こいつがオレのことを「勇者」だとか言わなかったら、こんなことにはならなくて、毎日平凡に暮らしていけたんだ…
それでも、この「魔王討伐」という嘘っぱちな旅の目的に賛成してくれるなら感謝する。
「勇者様…私、勇者様のご無事をお祈りいたします。」
カテリーナが目をうるうるさせながらかわいいことを言う。
あーあ…こいつだよ、こいつも勇者が嫌になった原因の一つだよ。
毎日のように、「勇者様」「勇者様」って、手作りのお菓子なんか持ってくるから、てっきりオレに気があるのかと思ってたら、ちゃっかり向かいの家のキリウスと恋仲になって。
結婚の報告とかいらないし。
「少しでも早く旅に出て、この世界に巣食う魔物を倒したいと思う。」
村人たちから拍手が起こった。
「見送られると辛くなるから」とか何とか口から出まかせを言って、さっさと村を後にした。
村を出て、しばらく行ったところで、キルトと落ち合う。
「どこ行く?」
「どこでも。」
「勇者」でさえなければ、どこだって。
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