第2話 提案

「なんで?そっちは立場的にいい方じゃん?」

「いや、結構面倒なこと多いけど?」

「こっちに比べたら全然マシだよ。」


なぜか会話が弾んでしまう。

気がつくと、勇者VS魔物の、どっちが冴えないか話になってしまっていた。



「あのさー、ずっと疑問に思ってたんだけど、何でオレが『勇者』ってわかったわけ?」

「え?何となく。そっちこそ、こっちは上手く人間の姿になってたと思うんだけど、何で『魔物』ってわかった?」

「あ、何となく。」



もしかして…



「『勇者』の匂いとか、なんかオーラとかそういうの感じる訳じゃないんだ?」

「ないない。おれは?」

「特に、ないかも。」



それなら…



「なぁ、オレら、立場交換してみない?」



魔物は黙ってしまった。



言ってから気がついた。

ダメだ。

あっちが「勇者」やるってことは、同族を倒す役割を担ってしまう。

それは無理だろう…



「ごめん…やっぱ…」


「いいの?」



え?



「あ、でも、そしたら魔物倒したりしなくちゃなんなくなるけど?仲間を倒したりとか無理でしょ?」

「仲間じゃないし。」

「え?」

「なんか、一括りに『魔物』ってされてるみたいだけど、種族違うと敵対してたりして、やりあうよ。」

「でも、何種類か群れて現れることとかあるじゃん?」

「ああ、そういう時だけだと思うけど。戦闘外れても仲良い奴ら見たことない。」

「そうなんだ。」

「でも、立場入れ替えるって、すぐバレるんじゃない?」


そう聞かれて、考えていたことを口に出した。


「『勇者』にはこれといって印とかある訳じゃないし、みんな『何となく』認識してるなら、オレら2人が一緒に行動してたら、どっちがどっちかわかんないんじゃないかと思って。」


魔物は少し考えてから言った。

「それ、試してみたい。」

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