第9部 第3章 決着

「今度はどうするんですか? 」


 俺が女神エーオストレイル様に聞いた。


 だが、女神エーオストレイル様は返事をしなかった。


 まだ、彼らに仲間としての意識はあるようだ。


 だが、俺はどうするか。


 たくさんの敵と仲間を死なせてしまった。


 もはや、これは女神エーオストレイル様の戦いなだけでなく、俺の戦いでもあるのだ。


 だからこそ、決着をつけないといけない。

 

 まだ、アルメシアが生きている。


 そして、バーキラカ、グリュンクルド、ギースがいる。


『決着をつける時が来たのかもしれない。君が私の所望した身体の中にいたのはそれを決意させるためだったのかもしれないな』


 そう初めて決意のようなものを女神エーオストレイル様が告げる。


 俺は俺の決意を述べただけだが、それに同意してくださった。


 俺が死んで、こちらに転生した意味があるのなら……。


 親友の律の事を放置して見て見ぬふりをした苦しみを、ここでしたくなくて今度は進んで手を汚して皇太子を助けてしまった。


 結局、またしても苦しみのある選択をしてしまったわけだが、それでも、これだけ死なしてしまったのだ。


 もはや、引くことは許されないのだと思う。


 俺はやり通すしかない。


『それは私も同じだ。君は私の同志だな』


 そう女神エーオストレイル様が微笑んだ。


 それと同時にさらに飛ぶスピード上げた。


 それでパッと地面に落ちている槍を拾った。


 それから凄まじい上昇を始めた。


 それは何なのか、俺には分かった。


 高高度からの降下で槍でパーサーギルの中核を槍で打ち抜くのだ。


 中核を破壊して、槍で完全に肉体から打ち抜いて無くしてしまう。


 凄い高さまで女神エーオストレイル様が到達した。


 そして、目を閉じた。


 外の映像が見えなくなった。


 互いに視界は共有しているからだ。


 身体の方は使い方が分からないからか、女神エーオストレイル様が使っておられるが。


 迷いを振り切るように目を閉じているように思われた。


 共有していることもあり、目を閉じているせいで、女神エーオストレイル様の気持ちが痛いほど分かる。


 彼らは同族だ。


 そして、餌であった人間の味方をして、女神として転じて人間との子を成した。


 それは、女神エーオストレイル様自身は仲間を捨てて自分の幸せを取った罪だと思ってらっしゃるのだ。


 自分が裏切り者である事も理解しておられた。


 だからこそ、罪の意識から彼ら同胞を封印しか出来なかった。


 殺し尽くせなかったのだ。


「……皇国の最初の皇帝はどうおっしゃったのですか? 」


 俺が恐る恐るそう聞いた。


『君の思う通りにしたらいいと……。これが世の中の変わるきっかけなら、流れるようにそちらへ行くだろう。いずれ彼らが神の復活としてあるかもしれないが、その時に人間が勝つか勝たないかは天に任せたらいい。全てはそうなるべくなっているだけだと……』


 そう女神エーオストレイル様が少し戸惑いながら話す。


 それは皇国の最初の皇帝の優しさなのか、それとも未来が読めたのか。


 それは分からないが、ここに俺がいると言う事も意味があるのかもしれない。


『私もそう思うよ』


 そう女神エーオストレイル様の言葉が響く。


 それで決めたのだろうか、目を開いた。


 ぱっと視界が開けて、広大な空と山に挟まれた狭隘地が眼下に見える。


 ふぅと女神エーオストレイル様が息を吐きだした。


『行くよ。今度は彼らを滅ぼすために』


 そう女神エーオストレイル様が決めたように呟いた。


 降下が始まった。


 その重力の加速に自らの加速を加える。


 風切り音が凄い。


 轟音のように聞こえる。


 それで一気に槍を突き出した。


 パーサーギルの胸にある中核の場所へ。


 凄まじい勢いがついているせいでパーサーギルの本来堅い表面を槍があっさり貫いた。


 汚泥のような体内物質を跳ね飛ばすように、パーサーギルの中核を女神エーオストレイル様が一撃で貫いた。


 中核はさらに堅いらしくて、槍にそのまま中核が刺さって身体の外まで突き刺されたまま打ち抜かれた。


 勢いが余ったのか、槍はパーサーギルの中核を刺したまま地面に突き立った。


 それは凄まじい勢いでされたために、パーサーギルは一瞬、何が起きたか分からなかったようだ。


 そして、女神エーオストレイル様は中核を槍に刺したまま地面から抜くと、もう一度打ち抜いたパーサーギルの身体を飛んで突き抜いて、中核が刺さったままの槍を持ってパーサーギルの背中に現れると槍を突き上げた。


 パーサーギルは電池が止まったように、その瞬間に動かなくなった。


 中核が破壊されるとそうなるらしい。


『君が勝ち名乗りをあげると良い』


 女神エーオストレイル様の言葉が響いた。


「いや、俺は何もしていないし」


 そう答えたが、女神エーオストレイル様の優しい気配がした。


 そして、中核が刺さった槍を突き上げた姿のままで自分の身体のコントロールが戻った。


 すでに、パーサーギルが動かなくなって、槍で中核をくり抜いて突き上げてるんだから、まあそれでこちらが勝ったのは分かるらしくて、修羅とゲオルク率いる父のシェーンブルグ伯爵の騎士団と皇太子の率いる騎士団から歓声が上がる。


 それで俺が勝ち名乗りをあげようとしたら、ガタッとパーサーギルの身体が地面に崩れた。


 それで気になっていた尾の毒液の溜まってる所が歪んで裂けていくのが見えた。


「爆発するから、逃げてぇぇぇぇ! 」


 そう、俺がとっさに叫んだ。


「は? 」


 姉とか唖然としたけど、慌てて全員が逃げたした。


 修羅の逃げ足の凄さをその時に初めて理解した。


 速い速い。


 一番遅かったのは皇太子の御付きの武官アレクシスが率いる皇太子の騎士団だった。


 そして、その瞬間に、身体のコントロールを再度女神エーオストレイル様に取られて空を飛んだ。


 それと同時にパーサーギルの毒袋に引火して凄まじい爆発が起こった。


 毒液成分について燃えてる火があたりに飛び散った。


 叫んだ、おかげで何とか逃げ切れたようだが、一部は飛んできた火でやけどしたりしていた。


 こうして、自分でするはずの勝ち名乗りがまたしても無茶苦茶になったのだが、皆が爆発に巻き込まれなかったので良かったと思おう。


 


 

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