第9部 第2章 戦闘
自分の身体が空を飛ぶと言うのを始めて体験した。
空を飛ぶって実は怖いんだなと……。
別に高所恐怖症では無いが、昔、親戚の叔父さんがヘリに乗って、足元から下が丸見えで恐怖を感じたとか聞いてたが本当だ。
ヘリが落ちてもパラシュートも無いのだ。
それと同じで俺が身体を動かしているわけでは無いし、俺がどうにもできるわけでは無いが、羽根を使って相手の攻撃をギリギリで女神エーオストレイル様が避けるのが怖すぎる。
だが、その戦いを見ながら思った。
俺は何もしなくて良いんだろうか?
目の前に広がる戦場でたくさんの修羅の死体がある。
それ以上にピュットリンゲン伯爵の軍の死体もあるし、ギード・エックハルト・ツェーリンゲンの配下の死体も転がっていた。
この戦いの結果に俺は責任がある。
そして、エーオストレイル様を見て歓声をあげて再度戦い始めた修羅達を守らないといけない。
それで目を凝らす。
パーサーギルの顎を一撃で槍で女神エーオストレイル様が破壊した。
それは見事なものだった。
恐らく、顎を支えている場所を綺麗に槍で突き抜いたようだ。
どうやら、武器の使い方にも精通しているようだ。
それと、父のシェーンブルグ伯爵の配下の騎士達が火矢を使い始めた。
確かに火攻めもするかもしれないと父のシェーンブルグ伯爵に準備するように頼んでいた。
実はこの世界では火攻めは意外と無いのだ。
一つは卑怯である事、そしてもう一つはせっかく得られる相手側の城や町や作物が焼かれてしまうからだ。
俺の居た世界では敵の作物とかに火をつけて相手を挑発したりってのは中世ヨーロッパでもあったはずだが、作物が意外に貴重であり全ての作物は女神エーオストレイル様の賜物とされていることからか、そういう事は特に皇国では無かった。
それはある意味タブーだったのだ。
だからこそ、準備した。
脆弱な皇太子の基盤ではギード・エックハルト・ツェーリンゲンの反乱を早く納めなければならない。
でないと、また別の貴族の反対派が動き出す。
シェーンブルグ伯爵は皇太子と皇帝についているが、所詮は伯爵である。
しかも、汚れ仕事をしている伯爵家で、あまり他の貴族と親しくない。
そう考えると、戦いはえげつない事をしてでも早く終わらせないといけない。
そう考えで火攻めの準備を内緒でしてたのが良かった。
そして、火矢が当たったところによっては大したことは無いが、何故かあたり場所によって、火が拡がる場所がある。
恐らくは体内に油系統のリンパのような流れがあると見た。
「エーオストレイル様っ! 見てください! 火矢の火がそのままパーサーギルの身体に燃え移って燃えてるところがあります! 何らかの油分の流れが身体にあるんだと思います! それに火をつけましょう! 奴を焼き尽くすのです! 」
『分かった』
即座に女神エーオストレイル様がそれを理解して動いた。
目の前の視野がパーサーギルを透過するように見えだす。
火が付くパーサーギルの身体の油分の流れを見分けているようだ。
そんなことが出来るんだ。
それに合わせて、次々と飛んできた火矢を掴むと、その流れに突き刺していく。
それで火がパーサーギルの身体に燃え拡がって行く。
その油分の液体のパーサーギルの身体の流れを透過して見ると手足とともに、尾のあたりにそれがたまっている部分がある。
「あれを破壊しましょう。油分がたまっていると思います」
『恐らくは、毒液の流れだな。パーサーギルは毒を尾から発射できる。とすると火を用意したのは良かったな。奴も毒液に火が付くのは理解しているはずだ。下手に毒液を噴射すると身体が燃えてしまう。毒液を撒かれれば仲間が危なかったがな』
女神エーオストレイル様が笑ったような気がした。
それで、少し驚いた。
感情は人間と同じなんだ。
『それは、長い間に人間として生きたからな』
そう女神エーオストレイル様が俺の心が読めるのか、笑っているようだ。
そして、パーサーギルが全身に纏わせている輸液……毒液なのはさっきの戦いでしびれている者がいるので修羅の連中は毒だと気が付いているようだが、それが燃える事にもまた気が付いた。
下に落ちて燃えている火矢の燃えてている綿を剣に纏わせて、それでパーサーギルの足を刺しながら焼いていく。
パーサーギルが燃えだして慌てていた。
身体の仕組みのせいか、体内にあるときは酸素が無いので燃えないようだが、その毒液が表面に出た場合は燃えるようだ。
体表の保護と相手の動きを見つける為の手足の毛を守るために纏わせている毒液が燃えてパーサーギルは相手の動きを感じれなくなっているようだ。
目も潰されて何も見えない……というかアシダカグモなら毛から来る振動とかの動きを察するのが大事なのだが、パーサーギルも同じなら、目も潰されて手足の毛も無くなり、何も分からない状態になりつつあるはずだ。
『奴の身体の中の核が見えるか? 我らはあの中核を破壊されると動けなくなる。あれを再生するまでは復活が出来ない』
そう女神エーオストレイル様の言葉が響く。
そこで驚いた。
「つまり、不死なのですか? 」
『いや、完全に中核を破壊した後、身体から取り出してしまうと復活はできない』
「取り出していなかったのですか? 」
『すまない。もうわかっていると思うが、私は彼らの仲間だったのだ。だから、彼らの命を完全に奪えなかった』
そう女神エーオストレイル様がすまなさそうに心に響かせた。
つまり、封印していたのは殺せなかったと言う事なのだ。
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