幕間 第2章

 実に戦争が終わった後で即座に皇帝陛下が動いたおかげで、使者から戦争に参加した皆に皇帝陛下の直筆の手紙でツェーリンゲン公爵とオイレンブルグ侯爵の罪が暴かれて爵位も接収される事、アルンハルト公爵家とリンブルフ公爵に対して即時停戦とエードアルトが第二皇妃の皇太子殿下の弟君を次のアルンハルト公爵として皇帝陛下の元に連れて行く事を命令されたのであった。


 まあ、あの一方的な戦闘を見て動揺しきっていたリンブルフ公爵は弔い合戦をする気は無かった。


 あまりにも一方的な戦いだったのも大きかった。


 ヨハン達の戦いぶりはそれだけ恐怖を与えていた。


 正体不明の盗賊としていたが、父のシェーンブルグ伯爵はシェーンブルグ伯爵家の騎士団で何とかツェーリンゲン公爵とアルンハルト公爵を殺した賊は殺したとかバレバレの話をリンブルフ公爵にした。


 用意は完璧で、ヨハン達の部下は皆で逃げる振りをさせて、シェーンブルグ伯爵家の騎士達によって盗賊は敗走した事になっていた。


 ちゃっかり、ヨハンだけはシェーンブルグ伯爵家の紋章入りの騎士の甲冑を着てここに残っていたが。


 酷い茶番であったが、カルトロップとヨハン達の戦いにびびって立て直しと称して一旦引いた……というか逃げた事もあり、最後のあたりは何も見ていないし何も言い返せなかったようだ。


 さらに、エードアルトの件はそれとなく知っていたようで、皇太子をエードアルトが連れて行くと決まったことを流石にリンブルフ公爵は文句を言おうとしたが、エードアルトに対しての皇帝陛下の直々のアルンハルト公爵家の相続命令と第二皇妃の皇太子殿下の弟君の連行命令だったので逆らえなかった。


 こうして、皇帝陛下はちゃっかり自分の潜在的な敵であった三公爵家の二つを潰したのだ。


 エードアルトは転生者なので、御しやすいと見ているのだろう。


 こんな裏でドロドロな事が起きている事を知らず、皇太子殿下が走ってきて俺を抱き上げたり、まあいろいろとあったわけだ。


 本当にあっという間に激変である。


 そして、その最大のものが俺にとっては、城に全員で泊まることになる事だ。


 本当に参った、俺の方は混乱したままである。

 

 好意的な雰囲気の中でシェーンブルグ伯爵家とその騎士達は城に入る。


 ヨハン達の荒くれの部下は逃げる振りして敗走した形にしたので、ヨハンしか残ってないから、流石に問題も起きない。


 問題はこれだ。


 晩の食事会にここで勝負と姉まで来て、俺の衣装をああだこうだと始めた。


 アメリアとニーナもノリノリだった。


 ここで皇太子を落とすのだと。


 いや、落としてどうすんだ?


 その上にまさかの父が来た。


「むう。勝負服だな……」


「当たり前でしょ。ここで落とさないと……」


 父のシェーンブルグ伯爵に姉が凄い砕けた話し方をしていた。


 俺がそれで驚く。

 

 俺の見ている場所では父と姉は常に慇懃に話し合いは行われていたので、こんな仲が良さそうな砕けた雰囲気では無かった。

 

 いやいや、どうゆう事? 


「ああ、普段のはよそ行きよ。いつもはこんな感じ……」


「まあ、気が付いてると思うけど、俺もお前と同じだからな」


 そう父であるシェーンブルグ伯爵が笑った。


「は? 」


「だから、俺もあっちから来たの」


 俺は気が付いて無かったぁぁぁぁ! 


 確かにその方が話が繋がるけど。

 

 でも、まさかと思っていた。


「で、でも、じゃあ叔父さんは? 」


 俺が動揺して聞いた。


 それだと叔父さんが連行されたのがおかしいのだ。


 それが心に引っかかって俺は一番可能性のあった父も転生者である事を考えていなかった。


「ああ、叔父さんはこちらの人だったの。それで父が転生者であると気が付いたので、力技で私が貴方が転生者ねって言って皆で幽閉したのよ」


 一番、糞な展開だったぁぁぁぁぁ! 


「あんときはあれしか無かったからなぁ。バレると思わなかったし。俺を実はあいつが調べてるってわかった時はヒヤッとしたわ」


 父も思いっきり糞だった。


 まあ、そうでないとあんな手は使わないよね……。                         

 

「にしても、皇太子殿下が手を出して来たらどうすんの? 」


 父のシェーンブルグ伯爵が姉に聞く。


「それはそれでしょ」


「いやいや、とりあえず、まだ婚約者だからって断りたいんだけど……」


 俺がそう希望を話す。


 そもそも、俺は女性じゃないし……。


「まあ、マクシミリアンが女性になってからでもいいけどな」


「へ? 」


 俺が凄い顔で父のシェーンブルグ伯爵を見た。


「いや、お前の中にな、女神エーオストレイル様がいるんだ。それで、お前はしばらくしたら男性から女性に変わるの……」


「は? 」


「伯爵様っ! 大事な話をそんないきなり適当なっ! 」


 アメリアがブチ切れた。


「いやいや、どう言おうと、これは現実だし……」


「お父さんは軽いのよ」


「まあ、重く言っても変わらんだろうに」


 などと父と姉が話すのを固まって聞いていた。


 ど、どゅこと?


「貴方の中におられる女神エーオストレイル様はこの地に降臨されたときに悪鬼羅刹を殲滅するために男の神として顕現されて、悪鬼羅刹を殲滅なされた。そして、全てを倒して浄化した後に女神に変わられて今度は大地に平和と豊穣と繁栄をもたらしたの。だから、男から女に貴方は変わるの」


 姉が優しく話す。


 だが、混乱しまくっている俺には、その言葉は心にまで届かない。


「ふぉぉぉおぉおおおぉおおぉぉおぉおおおおぉぉ! 俺、女になるの? 」


 俺が絶叫したら、シェーンブルグ伯爵や姉だけでなく、アメリアやニーナも頷いた。


「え? 知らなかったの? 俺だけ? 」


「ヨハンもゲオルクも実は知ってるぞ? 」


「はあああああ? 」


 俺がさらに動揺しまくり。


「だから、女性として育ててたでしょうに」


「いや、婚約の為じゃなくて? 」


「いきなり貴方が女性になった時に困るでしょう? 」


「ふぁああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」


 動揺が止まらない。


「あの? 大丈夫ですか? 」


 俺の叫び声を聞いて皇太子殿下の執事がノックして外から声を出してきた。


「ああ、心配ない」


 父のシェーンブルグ伯爵が答えた。


「皇太子さまが皆さまと御一緒に御食事をとおっしゃってます」


 そう執事が声だけ伝える。


 本来なら入室して言うのだろうが、俺が着替えをしていると言う話をアメリアがしたらしく遠慮していた。


 いや、父はいるんだけどね。


 でも、良かった。


 混乱しまくって、頭がまとまらない。


 それで俺の事を神の子とか言ってたのか。


 でも、女性になるとか言うのは無いよな。



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