第1部 第6章 え?
気が付いたら、ベットに寝ていた。
意識が飛んだらしい。
目の前に姉が微笑んで座っていた。
目が合ったので聞いてみた。
「さっきの話、冗談だよね」
そう俺が姉に聞く。
しかし、姉は無言で首を振った。
「いやいや、俺は男だし子供産めないし」
「産めなくても良いのよ。そういう話も皇帝とかとついてるの」
「そんな馬鹿なぁぁ! 」
俺がガバっと起きて叫ぶ。
男の皇太子の婚約者ってぶっちゃけ、皇妃になっても子作り出来ないし。
「……ここだけの話をするわね。向こうでも絶対に喋ったら駄目よ。極秘の話だから……」
そう姉が囁く。
いや、完全に向こうに行く事になってるのかと思うと震える。
「あのね。皇太子は皇帝に捨てられてるのよ」
「は? 」
「すでに皇帝はグンツ伯爵と第一皇妃と皇太子を見限ってるわ。そして、グンツ家も一枚岩じゃない。だから、三公爵のトップのツェーリンゲン公爵側とも話はある程度ついてるという事。皇太子はじきに第二皇妃の息子に反乱を起こされて殺されるわ」
「ちょっと! 俺は何でそんなところに? 」
「だから、やらせなのよ。グンツ家の弟のロホス・ジークハルト・グンツは先代のグンツ伯爵が亡くなって金を無駄に使う兄の現当主のグンツ伯爵に怒りを感じているのよ。皇妃もグンツ伯爵家が受けるべきじゃないと反対してた。弟のロホス・ジークハルト・グンツはツェーリンゲン公爵公爵側と仲良くしてたからね。それを兄の当主のグンツ伯爵の娘が第一皇妃になりたくてグンツ伯爵と共に暴走した。この国は騎士は騎士たるべきで、貴族は貴族たるべきとその身分に合わせた事をするべきと言う確固たる考え方が強いのは知ってるでしょう? 」
いや、それなら俺は男子は男子として生きるべきではと突っ込みたかったけど、怖いから止めた。
騎士は騎士たるべしとか貴族は貴族たるべきとか言っておいて、凄い矛盾した発言をしているって思わないんだろうか。
「しかも、金遣いが荒くて、どうしょうもない。だから皇帝も怒り心頭なのよ。それでもうじき第一皇妃は亡くなるわ。今は重い病気だしね。そして、グンツ伯爵も弟のロホス・ジークハルト・グンツに変わる。全部粛清されるの。恐らく息子である皇太子は幽閉で終わると思う」
「いやいや、それじゃあ、うちは婚姻する意味がないのでは? 」
「だから、婚約者として終わるのよ。ケチはつくけど、皇家に婚約者を出したことがあるという事実は残るし、グンツ伯爵を安心させて騙す手伝いもするわけ。結果としてうちはツェーリンゲン公爵家と新しいグンツ伯爵には借しが出来る。……まあ、本当の話はね。父と皇帝が実は転生者の文化についていろいろと共有していて、男の娘にどちらも執着しているってのが大きいわね。貴方は私の双子で美少女然としているから、それで選ばれたの。役目が終われば元の嫡男に戻れるわよ」
「いや、すでに男の娘になった時点で俺は終わりでは? 」
「マグダレーネは死んだことになるし、貴方は嫡男としてその後に復活することになる。皇帝と父は男の娘に夢を持っていてね。それで暴走してるのが一番大きいのだけど」
「いや、第一皇妃が糞だったとしても、一応、息子に対しての愛情を皇帝も持たないのですか? 」
「ええ、だから、男の娘を婚約者にしてあげるらしいわ。そんな男の夢を与えてあげたいと……」
「いや、おかしくないの? 」
「ちょっと考え方が逝ってると思うけど、まあ、おかしいわよね。でもそれを親心があると思ってるからどうしょうも無いし」
いや、無いだろ。
絶対無いだろ。
この皇国も父親のシェーンブルグ伯爵家もおかしい。
間違いなくおかしい。
いくら何でも男の娘が婚約者とか……。
「まあ、父は研究しすぎて頭がおかしいと言えばおかしいし、皇帝も変わってるからね。本当は第一皇妃と結婚としたくなかったのに、先代の亡くなった父親の先代皇帝に皇家の財政の問題で無理矢理結婚させられて恨んでたらしいから、それで変になったのかもしんないけど」
「いや、それでも男の娘はおかしいでしょ。あり得ないですよ。貴族社会のみならず、他国からもおかしいと言われますよ」
「ああ、それは大丈夫。あくまで私の妹のマグダレーネが嫁ぐのだから。男の娘って知っているのは皇帝とツェーリンゲン公爵家と父とかごく一部の人だけだから」
「あ? 」
「勿論、皇太子も貴方が男って知らないわ。あくまで一部の人が知ってて、それで興奮したいんじゃないの? 」
姉が苦笑した。
変態だ。
「まあ、それだけ第一皇妃が憎まれているのもあるわね」
「いや、俺、男だし」
「だから、女性としてのふるまいをずっと教えていたんでしょ。そんなに長くないから我慢なさい」
「あぅ、姉さんは正直、どう思うんですか? この話を……」
「私は前世でOLをやってたの。それで、ずっとボーイズラブが見たいだけの腐女子をしてたわ」
姉が懐かしそうに呟いた。
「え? 」
腐女子?
腐の方?
「だから、貴方が皇太子と一線を越えてしまったら、それはそれでいいのよ。私が全力で応援して助けてあげるから」
姉が今日一番の微笑みを浮かべた、
俺はもう一度意識を失ったが……。
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