第17話 ヤムの過去
魔法使いヤムは三人をジロジロながめた後かすれた声で恨めしそうな口調でつぶやいた。
「何の用だ。」
リナがまず答えた。
「私達は日々怪物の襲撃に怯えた生活を強いられています。
昔、あなたは王族と共に戦って居たと聞いています。
何故、あなたは敵方に寝返ったのですか?」
老人はフーと大きなため息をついた。
「何の用かと聞いている。」
ヤムは声のトーンを上げた。
「お前達が来たことでこの場所も奴等に見つかる恐れが高くなった。
とっとと帰ってくれないか。」
「あなたは奴等と手を組んだんでしょう?」
奴等とは言わずとしれたドゥームの事だ。
「どうして?」
「お前は人の話を聞かないな。」
「お互いにね。」
二人の間に沈黙が訪れた。
やがて老人はめんどくさそうに洞窟の周りを覆っている岩の一つに腰かけて話し始めた。
「奴等と手を組んだ?
何の話だ。」
「私達に伝わっているのはあなたがドゥーム側に寝返ったために王国が滅びたということよ。」
老人はまた大きくため息をついた。
「誰かが話を作ったんだな。
あの戦いの後は誰もいなかった。
そう。わし一人だけが王城に取り残された。
それ以来ずっとわしは一人じゃ。」
その言葉を聞いた三人はヤムが敵ではないのではと思い出したが警戒感は解かなかった。
すぐさまジュエルが言葉を続けた。
「この間隣村がドゥームの襲撃にあい全滅しました。
我々の村にもドゥームは迫ってます。
奴等との戦い方を教えてください。
ドゥームと戦うには魔法使いの力が必要なんでしょう?
それからあなた以外の魔法使いはどうなったのですか?」
老人はマセルの実の水筒を取り出し一口飲んで答えた。
「魔法使いは奴等をいっとき近づけなくするだけだ。
魔法使いは弱い。」
老人はそこで少しむせ込んだ。
「大多数の者はあの戦いで命を落とした。
お前達の村は襲撃されているのか?」
今度はクレメンスが答えた。
「奴等の襲撃は日の沈む方から日の登る方へと移動していてもう我々の村近くまで迫っている。
しばらくは森に逃げ込んでしのいでいるけれど奴等が大挙して来れば皆殺されるだろう。」
「お願いです。力を貸して下さい。」
リナがそう話したが老人は黙ったままであった。
そして背を向けると投げ捨てるように
「帰んな。」
老人はそのまま洞窟に入って行った。
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