第16話 ヤムを追え その2

 その日、王城から帰った二人はクレメンスの家を訪ね見舞った。


 クレメンスは母親と二人暮らしで母親が飲み物を出してくれた。


 クレメンスは昨日はドゥームの攻撃で打撲の箇所が痛むので帰宅後直ぐに横になっていたが、一夜明けると普通に歩き回っていた。


 そして、持ち帰った物を見せてその特徴を伝えた。


 「そうか。じゃあ明日は僕も一緒に行っていいかい?」


 「もちろんよ。」


 リナは元気良くそう答えたが、ジュエルは少し渋い表情を見せた。


 翌朝、日が登るやいなや三人は集まりジュエルが昨日見つけたアクセサリーのような物、リナはそれをラコスと呼んだ。


 「ラコスは私が持つとロムが吠えるのよ。


 クレメンスはどう?」


 ジュエルはクレメンスにラコスを渡した。


 グリマーはリナの腕の中でじっとしている。


 「クレメンス、ちょっとこっち来てみて。」


 そう言われてクレメンスはリナの方に歩み寄った。


 「キーキーキーキー。」


 案の定グリマーは吠えた。


 「離れて。」


 クレメンスが距離を置くとグリマーは静かになった。


 「ほんとだね。


 あ、こっちの方だ。


 さあ、行こう。」


 ラコスの示す方向に一行は歩き始めた。


 暗くなるとドゥームが出やすくなるので足早に進んだ。


 王城を右手に見ながら更に先に進んだ。


 次第に道が道でなくなりやがてどっぷり森に入り込んだ。


 ラコスが段々熱くなってきた。


 「こっちだ。」


 クレメンスは熱くなったため素手で持てなくなったラコスをキャパの皮を編んで作った手ぬぐいで掴んで木々と岩が入り混じったあたりを調べた。


 「見ろ。この下は洞窟になっている。ラコスはこの方向を示しているみたいだ。」


 中はやっと一人が入れるくらいの空間になっていて見たことのない不思議な小物でいっぱいであった。


 まず、クレメンスが。次いでジュエル。そしてリナの順で交代で穴の中に入った。


 そこは明らかに何者かの棲家であった。


 今は誰もいる気配はないが明らかに直前まで何者かが居た痕跡があった。


 「おい。わしの巣窟で何をしておる。」


 外で待っていたクレメンスとジュエルは不意に声をかけられて咄嗟に身構えた。


 そこには髪も髭ものび放題の小柄な老人が杖をついて立っていた。


 「年寄りに何をするつもりじゃ?」


 二人は構えた剣を鞘に戻すとまずジュエルが話しかけた。


 「もしやあなたはヤムですか?」


 声を聞いてリナも出てきた。


 「ああ、そうじゃ。」


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