第15話 ヤムを追え
ドゥームの出現で怪我をおったクレメンスはいったん村に戻る事になった。
ジュエルとリナはクレメンスを送り届けると再び王城の跡地に向かった。
相変わらずグリマーはリナから離れない。
村から王城跡までは歩いても四半日の距離なのと道中は開けていて襲われる危険性もない。
王城の跡地は草木がぼうぼうに生えて完全に廃墟化していた。
中に入るとそこも荒れ放題で誰も手を付けずに放置されたままであちこち埃まみれである。
ヤムの手掛かりをとジュエルとリナは埃をかぶりながら過去の足跡がないかとそこら中を引っ掻き回した。
「こんな状態で手掛かりなんて見つかるのかしら。」
リナがぼやく。
「さあな。しかしここから魔法使いがどこに行ってしまったのかは分からないんだ。
ここ以外どこを探せばいいんだ?」
ジュエルの返事はもっともだったがその言い方が気に障ったのかリナはさらに嫌味を言う。
「大体何で他の人達は来てくれなかったの?
声をかけたんでしょう?」
「仕方ないだろう。
皆、作物の収穫が忙しい時だ。」
ジュエルはぶっきらぼうに返した。
まだ、リナはぶつぶつ何か言っていたがジュエルは気にせず探索を続けた。
リナが探し物をしている間、グリマーはリナの頭の上にしがみついている。
リナが動くたびにグリマーは振り落とされないようにしがみついて彼女の髪をめちゃくちゃにした。
ふと、リナは何かを手にして動きを止めた。
「ジュエル。これ何かしら。」
そう彼女が言った途端グリマーが鳴き始めた。
「キーキーキーキー」
グリマーは彼女の持った金属のアクセサリーのような物に向かって飛びかかった。
「ロム。どうしたの。」
リナはグリマーにロムという名前を付けていた。
グリマーはアクセサリーのような物を持ったリナに少し距離をおいて吠え続けている。
「どうしたんだろう。
俺にもみせてくれないか。」
リナはそれをジュエルに渡した。
彼はそれを表裏くまなく見てみたが何の用途なのかは全く分からなかった。
ただリナがそれをジュエルに渡すとグリマーは不思議と吠えるのを止めたので以降彼が持つことにした。
そしてその後も探索を続けた。
確かに戦いの痕跡はあちらこちらに見られたが魔法使いの痕跡となるとその手掛かりを想像できない。
途中昼食を取りさらに四半日調査したが見つけたのは戦い後放置されたままの剣だけだった。
何の成果もなくその日は暗くなる前に村に帰れるように引き上げることにした。
「ねえ、ジュエル。
結局何も手掛かりは無かったわね。
明日も探索するなら誰か手伝ってくれる人を連れて来ましょう。」
リナがそう話したが、ジュエルは彼女の言葉が全く耳に入っていないようだった。
「ねえ、聞いてる?」
ジュエルはさっき見つけたアクセサリーのような物を手にして何か考えているようだった。
そして少しずつ身体の向きを変える動作をしだした。
「何してるの?」
「うん。これ何だか俺が向きを変えると少しだけど温かくなるんだ。」
そう言うと今度は後ろ向きになって今来た道を戻りながら時々向きを変える動作を繰り返した。
「これ、ある方向になると熱を発するみたいだ。」
「えっ?」
リナはジュエルが何を言っているのか良く理解できないようだ。
ジュエルは彼女に理解させるためにその物をリナに渡そうとしたが案の定グリマーが吠え始めた。
「どうやらこれを君には持たせたくないようだな。」
「そうみたいね。
ねえ、明日はこれの示す方向に行ってみようか。」
ジュエルも同意した。
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