第14話 魔法使い追跡

 ヨナ爺はヤムが最後に姿を消したのが王城でありその後の消息は全くない。


 老人達の家を出てからヤムの足取りを掴むため王城跡に向かうことにした。


 一行は水の補給のため少し遠回りにはなるがリマ湖に立ち寄ることになった。


 生い茂る森の木々の隙間から湖の水面が日の光を反射して眩しく三人を照らした。


 帰り際に老人達からまた3日分の食料をもらってそれはジュエルが持ち、クレメンスは水を、そしてリナはグリマーを抱いていた。


 老人宅を出た所で森に帰そうとしたのだが、グリマーは何度離してもリナにしがみついて離れようとはしないのだ。


 仕方なくリナはグリマーを抱きかかえ食料と水はクレメンスとジュエルが持つ事になったのである。


 食料などを持つのは慣習として女性が持つようになっていたのは男性に持たすとどうしても扱いが荒く食料がめちゃくちゃになって食べれたものではなくなってしまうからだ。


 「ジュエル。振り回しちゃ駄目だからね。」

 リナが釘を指す。


 「分かってるよ。」


 クレメンスとジュエルはめんどくさそうに答えた。


 木々の間から湖の水面が見え隠れしてもう少しで水辺に届く所に来た所でリナの腕に抱えられぐっすり眠っていたグリマーが突然起きたと思うと甲高い声で叫び始めた。


 と、その直後右手のクレメンスの斜め前方に一体のドゥームが現れた。


 不意を突かれたクレメンスはドゥームの鞭のような手の打撃を受け、その場に倒れてしまった。


 すぐさまジュエルは腰の剣をつかみドゥームに相対する。


 クレメンスがドゥームの腕にやられたのを見ていたのでジュエルは同じ攻撃を受けずに空振りをさせてやり過ごす事ができた。


 ジュエルは咄嗟にドゥームの腕を剣で切り落とし一連の動作でとどめを刺した。


 ドゥームを倒したのを確認するとジュエルとリナは倒れているクレメンスに駆け寄り声をかけた。


 「クレメンス、大丈夫。」


 リナは湖の水を汲んで来てクレメンスの顔にぶっかけた。


 幸いクレメンスは意識を取り戻した。


 怪我は打撲だけで生命には別状問題無さそうだ。


 「面もくない。油断した。」


 そして彼がゆっくり立ち上がるのを待ってリナはこう言った。


 「油断したじゃないでしょう。


 あなたがやられた時の私達の気持ちが分かる?」


 彼女らしい強い発言ではあったがその言葉の強さとは裏腹にほっとしたのか涙を流していた。






 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る