第13話 老人達
三人がアシュル山の老人達の住居に着いたのは四日目の朝だった。
道中拾ったグリマーをリナが抱きかかえていたが、どうも具合が悪いようで怪我をしている部分が膿んでいるみたいだ。
老人達の住居は森の中の木々にすっぽり覆われまるで森の一部になっているようでぱっと見住居があるとは指摘されないと分からないようになっていた。
それでも木々が生い茂る中で錆びた取っ手とドアノッカーが扉の場所を示しておりクレメンスがドアノッカーを数回叩いた。
暫くして扉の向こうから人の気配がしたと思うと扉が開いて、腰の曲がった老婆が姿を現した。
その老婆は三人には目もくれずグリマーの様子を見るなりリナからそれを奪い取るようにだが優しく抱き取り中に引き返した。
三人も恐る恐る老婆の後ろからついて中に入った。
老婆は一言も発することもなくグリマーをテーブルにシーツを敷いてそのうえで治療を始めた。
「グリマーを傷つけるなんて愚か者が。」
老婆は治療をしながら呟いた。
そこに奥から白髪の老人がやってきて三人に声をかけてきた。
「ババァは昔から怪我人を観るのが得意でな。まあ、グリマーみたいな動物なんかも何度も治療しているから安心しなさい。」
白髪の老人は足腰が不自由なようで使い古した杖をつきながらリナに優しく語った。
クレメンスはこの老人と面識があるようで、親しげに話しかけた。
「ヨナ爺、元気そうだな。」
「まあ、なんとか病もなくやっているよ。それもこれも青年隊の皆さんが生活に必要な水や食料を運んで下さるからだよ。」
治療が終わったのか老婆がグリマーを優しく抱きかかえて四人の所に来て空いている椅子に腰掛けた。
「グリマーは昔から災いを予知すると言われている。
けれどグリマーに危害を加えるとその災いを危害を加えた者達に与えるとも言われている。
あんた方がグリマーに怪我をさせたのかね?」
三人は首を横に振った。
リナがグリマーを見つけた時の話を老婆に伝えると安心したのかそのシワだらけの顔が穏やかな優しい表情に変わった。
やがて、グリマーはリナの姿を確認すると彼女の方に勢いよく飛びついた。
「あんたを気に入ったようだね。」
しばらくするとグリマーはリナに抱かれて眠りについた。
ジュエルが次に口を開いた。
「この間隣村がドゥームに襲われて壊滅してしまったんだ。」
一気にその場の空気が凍りついた。
「私達の村は幸い皆森に逃げ込んで無事だったんだがこのままだといつ同じ目に合うやもしれない。
なんとか奴らを退ける手立てがないか皆で考えてここに来ました。
そして、その鍵はかつてドゥームに敵対してた魔法使いがドゥーム側に寝返った事ではないかと我々は考えました。
そこで昔のドゥームとドゥームに対抗していた人々の話を聞かせてもらいたいと思いやってきました。」
老婆と老人はその話を聞いてお互いの顔を見て困惑の表情を浮かべた。
ヨナ爺が口を開いた。
「魔法使いがドゥームを抑えていたかは分からないがもっと昔は魔法使いが大勢居たようだ。
魔法使い達は町単位で結界を張っていたという話を聞いたことがある。
その結界のおかげでドゥームが近づかなかったのかもしれない。」
「では、魔法使いが一人ならどうだろう。」
クレメンスが問いかけた。
「一人だけだと結界はその魔法使いの周りだけだろう。
じゃが、戦いになると一人でも大きな戦力になる。」
今度はババァが答えた。
「魔法使いは何処にいるのかしら。」
リナが聞くと二人の老人は再び困惑の表情になった。
そしてヨナ爺が話した。
「魔法使いの存在は30年前にドゥーム側に寝返ったヤムが最後だ。
しかし、他の魔法使いは分からない。
ヤムに会って聞いてみるしかなかろう。」
そしてヨナ爺が古い地図を持ち出してきてテーブルに広げて指を指した。
「昔ヤムが寝床にしていた宿だ。
もう、何年も前にドゥーム達に襲われて廃墟になったと聞いている。
何の手掛かりもないかもしれないが。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます