第4話 リナ

 その夜、青年隊の会合に始めて参加することになったリナの姿を見掛けた隊員達は皆が皆苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


 リナは戦火の中、母親とはぐれて泣いていたところをムルに助けられた。


 まだ、1歳にも満たない赤子で燃え盛る村の中の広場の石畳の上に元気良く泣いていたところをムルが連れ帰ったのである。


 その日から、リナはムルとリムルの娘として育てられる事となった。


 リザードンが人の子を育てた例は無くはなかったが非常に稀なことである。リザードンは人よりも誠実であり厳格であり優しかった。


 そんな、リザードンの元で育てられたリナはそのリザードンの性格そのままを受け継いた。


 ある日、こんなことがあった。


 村で唯一の川で遊んでいた人の子達が二つの勢力に分かれて遊び場を占有しようとした。


 あげくの果て二つの勢力が乱闘にまでなってしまい怪我人まで出てしまった。


 夜、大人達の前で事の顛末を問いただした時子供達は一緒に居たリザードンの子供達のせいにした。


 まあ、リザードンの性質からしてそんなことはありえないとはわかっていたのだがそれでもリナは許せなかったようだ。


 突然リナがやって来て「違う。リザードンは何もしていない。あんたら恥を知りなさい。」


 その夜は一晩中人の子供達にリナは懇懇と説教をした。


 とにかくリナの説教は長いので有名だ。


 大人達が説教するより子供達にはこたえた。


 まあ、そんなことがこの村では日常茶飯事であり誰もが知っている彼女の性格であった。


 リザードンに育てられると皆あんなふうに説教魔になるのかのう。


 皆がリナがリザードンに育てられたので変わってると感じていた。


 リナが10歳になった年、隣村の若者達がリナの村の畑を荒らして作物を盗む事件があった。


 その時、彼女はそれを糾弾するのではなくもっと有効な解決策を提案しに単身で隣村の集会所に乗り込んでまた長時間の説教を始めた。


「あなた達、隣村の畑の作物を盗むと隣村から襲撃されるわよ。」 


 とにかく怖いもの知らずなのだ。


 幸い隣村とはそれがきっかけとなり畑を両方の村が共有し共同で栽培作業をすることになりその収穫もおかげで倍増することとなったのである。


 まあ、結果的にリナの行動は良い方向に作用するのだが、なにしろ説教が長いのには皆が彼女から距離をおきたいところである。

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