第2話 任命式

 ムルが翌朝城内に出仕すると、既にそこは任命式の会場となっており、正面中央には王家の方々の席が設けられ皇太后アイリーン・ラーンを筆頭に王夫妻、王妃は産まれたばかりのセシルを抱いていて彼女を見つめては微笑みかけていた。


 王夫妻の横の席は一つ空けてメナス王子とルイス王子が不機嫌そうに座っていた。


 王家の方々の席から向かいあって貴族や騎士という位の高い人々が座る席が用意され、その左右後方に兵士が配置されていた。


 特にその後方に配置されたのがメナス王子のリザードン兵でありそのことがルイス王子の不機嫌の種でもあった。


 「兄上、リザードン兵士を参加するとは聞いておりませんが。」


 メナスはそのことを当然付いてくることを前もって予想していた。


 「皇太后の許可はもらってある。」

 ルイスはそう言われると当然のことながら何も言えなくなる。

その事も解っている。


 「そういや部下からの連絡でムルの棲家が焼かれたそうだが、お前は何か知らないか。」


 ムルの棲家の焼き討ちは十中八九ルイスの息のかかった者達の仕業だろう。だからと言ってルイスが直接指示したとも思えない。


 「さあ、何のことだか。それより兄上、始まりますよ。」


 司会役の司祭ハマカが任命式開始の声を上げ式典が始まった。


 楽隊が演奏で盛り上げ、美しい踊り子達が場を華やかに彩る。


 やがてハマカが任命の儀と声を発し国王が立ち上がると共にムルとリムルに前に出るように案内係が指図した。


 国王アルフレッド・ラーンは任命証を読み上げた。


 「ここに、リザードン・ムルとその奥方リザードン・リムルが我が娘セシルの養育を責任を持ってなすことを命じる。」


 アルフレッドはハマカから用意されていた剣を受け取るとムルに手渡した。


 「頼んだぞ。」


 ムルは厳かに返事をした。


 「命に変えても。」


 ムル夫妻は儀式を終えると自分の席へと戻って行った。


 ムルとリムルの席は、用意されてるとはいえ仲間のリザードンもおらず貴族達の席から少し離れた場所にあり、まあ居心地は良いものではなかった。


 それでも任命式は無事に終わり式典が終わるとメナスはムルとリムルに棲家が焼き討ちにあった事、そして今この時より王宮に住むようにと言う事を伝えた。






 

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