第11話 勇者パーティーと初めての戦闘後
平原から湿地帯へと入った僕たちは、毒を吐く飛竜種のモンスターを難なく倒した。
新人ならともかく3年も働いていれば、1人でも討伐可能なモンスターだ。それを寄って集って4人がかりなんて可哀想だよ。
なんて考えながら、少しでも高値で売れそうな素材を持っていないか探す。
今日はハズレ。
もしかして、養殖物と天然物ではドロップする素材も違うとか……?
それならレア素材が高値で取引されるのも納得できるかも。
剥ぎ取りを終え、道案内役の僕を先頭にして一番近い町へと向かう。
野宿するつもりはないが、少しずつ遠回りしているのは事実だ。
今のところ誰にも気づかれていないけど、この作戦も長くは続けられないな。
「お前、なんでオレ様の盾に隠れなかった?」
僕の後ろを歩くゴーシュがふてくされた声で聞いてきた。
「毒のブレスのこと? あんなものは受け止めるものじゃないよ。避けないと」
その証拠にゴーシュの盾は一部が溶けている。
元々、傷だらけだった盾は今にも壊れてしまいそうで
本当にゴーシュが天然物のベヒーモスを受け止めていたのなら、この盾は木っ端微塵だっただろう。
よって、ゴーシュは養殖物のベヒーモスを受け止めて足止めした、と勝手に決めつけた。
「町に着いたら修理を依頼しよう。それでいいだろ、ゴーシュ」
「そういうことじゃねえよ! こいつはオレ様たちを信用してないんだ」
「他人に自分の命は預けないよ。それが基本じゃないの? 後方支援のイリスはともかく、レイヴは自分で身を守らないといけないと思う。魔力量は少なくても魔導剣士なんだからさ」
「っ!?」
レイヴは焦ったような、ゴーシュは意外だとでも言いたげな反応をした。
イリスは気づいていたけど、言わなかったのだろう。
レイヴの魔力量は異常なまでに少ない。赤ちゃん並と言っていいだろう。
この魔力では強力な魔法は発動できない。
これで勇者って本当!?
どうやってドラゴンを倒したんだよ!
というのが僕の感想だったりする。
ただの剣士なら仲間に守ってもらってもいいかもしれないけど、魔法の素質を持つなら戦い方のバリエーションだって増える。
味方を当てにしないと戦えないなんて論外だ。
……なんて絶対に口には出さないけど。
「おめぇにいい言葉を教えてやるよ。目は口ほどにものを言うってな」
僕は瞬時に目を閉じた。
さっきの戦闘時も今もやたらと僕に突っかかってくるゴーシュは、レイヴとは反対に魔法を頑なに使おうとしない。
魔力量はほどほどなのに、だ。
いくら
自分に厳しいタイプなのだろう。そういうことにした。
それからも険悪な雰囲気は続いたが、イリスが居てくれて助かった。
彼女が自然と話題を振ってくれるから少しずつ会話が生まれ、気づけば湿地帯を抜けて町に着いた。
宿屋が二軒しかない小さな町だ。
「二部屋でいいな?」
「そうしていただけると助かります」
男たちで一部屋、イリスが一部屋を使うつもりで宿屋の店主と金銭の交渉を始めるゴーシュ。
少し離れた場所で僕はレイヴに耳打ちした。
「少し出てくる。帰りは朝になるかもしれないけど、出発までには間に合わせるから」
「どこに行くんだ? ユーキはもっと協調性を持った方がいいと思うぞ」
「僕は暗殺者だ。暗殺者とパーティーを組んだことはないの?」
「ない。だから仲良くなれると思っている」
「それはありがたい話だけど事態は急を要する。これはトップシークレットだから、レイヴにも言えないんだ」
肩をすくめたレイヴはゴーシュとイリスの元へ歩み寄り、価格交渉の手助けに行った。
僕は許可を得たと捉えて宿屋を出る。
適当に屋根に上り、闇夜に紛れるように影をまとった。
「おやすみ、みんな」
僕が使えるのは
その名は影魔法。
どの書籍にも載っておらず、呪文構築が複雑すぎて誰にも解読することができない。リタによる地獄のような特訓の果てに習得した魔法だ。
師匠のくせにリタは影魔法を使えない。僕にだけ会得させて大満足していた。
影魔法には攻撃、防御など色々とバリエーションはあるがその中でも転移魔法を重宝している。
得体の知れない連中と同じ宿屋に泊まるなんて信じられない。
それに僕は枕が変わると眠れないタイプなんだ。
影の転移魔法で自宅に移動して、ベッドにうつ伏せに倒れ込む。
外泊すると夜の選択肢が減ることが難点だと思う。
僕は自由に過ごすために夜は帰宅すると決めている。どんな過酷なミッションを与えられても家に帰ってくる。
基本的にソロでしか動かないから味方を守る必要もないし、夜襲されるリスクも回避できる。マイホーム最高。
レイヴたちならきっと大丈夫だろう。
今日は疲れた。連携してモンスターを倒すなんて在学中以来で気を遣いすぎた。
僕はいつの間にかうつ伏せのまま眠ってしまった。
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