第1話 『復活』のゴーレム3

 飛んでいる間に少年から暴言やら暴力、はたまた難しい事を聞かれたりもしたが、落ち着いてから考えたかったから全部無視した。そしたら観念したのか、少年も大人しくなっていた。


 この辺りでいいか。


 見渡しのいい草原。人や 考えてみれば、そこまで城の連中に付き合う必要も無いような気がしてきた。


 少年も王様にはなりたくないみたいだし、此処にいる必要あるのだろうか?


 いっその事こんな城ぶち壊して、少年と一緒に冒険の旅に出るのも悪くないかもな。


 俺は壁に向かって思いきりパンチをしてみようとしたが、途中で体が動かなくなるの気配もなく、近づかれてもすぐに分かる。念のため索敵レーダーも使う事にしよう。


『索敵レーダー起動中』

 

 起動しっぱなしだった。


 ゆっくりと少年を降ろす。ぐったりしてるけど大丈夫だろうか。


「私をどこに連れて来たんだ?」

 

 さっき動けるようになったばかりだし、俺も知らない所だけど。とにかく、落ち着いて話せる場所とだけ言っておこう。


「まさかデウスに人格が存在するとは。命令も聞かないし、これでは使い物にならんではないか。計画の変更が必要か……」


 少年は一人でブツブツと何か考え始めてしまった。


(俺も聞きたい事が山ほどあるんだけど良いか?)


「なんだ」


(さっき街を殲滅しろって言ってたが、あの街に恨みでもあるのか?)


「お前の性能を確認するためだ」


(俺の性能を確認するため? 性能が見たいのなら誰もいない所でも確認出来るだろ。ましてや命を奪う必要なんてないし、街には多くの人が大切な物や、場所がたくさんあるはず。それを壊す権利なんて誰にもない)


「兵器の癖にそんな事を気にするのか、馬鹿馬鹿しい」


(馬鹿馬鹿しいのはお前だろ!)


「主人に反抗までするとはな。数千前に侵略者を滅ぼした兵器だと文献に記されていたが、こんなポンコツだったとは」


 どんな生き方すればこんなにねじ曲がった性格になるんだ? あれか思春期とか反抗期か? 本心では無いこと言っちゃうパターンか?


「デウス神は平和と繁栄の象徴だったな。頭の中まで平和が繁栄し過ぎてるとは期待外れだ。もう良い」


 少年は苦笑いを浮かべながら立ち上がる。


「デウスよ私を殺せ。その後、全機能を停止せよ!」


『司令官に重大な精神汚染を確認。命令を拒否する事が出来ます』


 精神汚染? 反抗期のこと?


「やはり出来ぬか」


 そう言うと興味を無くしたように無表情になった。


「興が削がれた。次の兵器を探すとしよう。起動キーと王子の身体はそのまま返してやる。自分のポンコツをありがたく思え」


 少年を包んでいた黒いオーラが膨らみ霧のように散り散りになると、糸の切れた操り人形のようにその場に倒れてしまった。


 俺何もしてないけど、何がどうなってるの?


『司令官に異常は確認できません』


 頭の中の声が少年の状態を教えてくれる。精神汚染とか言ってたけど、大丈夫なのか?


『再解析。司令官に異常は確認できません』


 つまり少年は無事だということなのか。まずはひと安心だ。 起動キーと王子の身体を返すって言ってたよな。この少年が王子なのか? 話の流れ的に操られてたようだけど。


(少年よ、大丈夫か?)


 声を掛けると少年が周りを、キョロキョロしながら上体を起こす。俺は安心させようとニコリと笑ってみたが、顔の表情筋は動かせてないようだ。


 少年は俺と目が合うと慌てて両膝を付き、両手を胸の前で手を組むと頭を低く下げた。参拝者もみんなこんな感じで俺に祈ってたな。


「申し訳ありませんデウス様。私はどうやら操られてたようです」


 少年の声は震えていた。


(確かにそんな感じだった。操られていた事は覚えてる? 詳しく教えて欲しいんだけど)


「はい。おぼろげながらも覚えております」


「デウス様もご存知の通り、我が王家は古代の時代に共に戦った一族の末裔であり、代々、この腕輪を引き継いでまいりました」


 そうなの?


「古代遺跡から発掘されたデウス様の御神像が、やっと御披露目されたと聞き、居ても立っても居られず、この腕輪を宝物庫より盗……持ち出し、城を抜け広場に向かっておりました」


 見かけによらずアクティブなんだね。


「本来ならば王自らが国をあげてデウス様の御神像を崇め奉るべきなのでしょうが、現在デウス様との関係は、その……、代々王家のみ受け継げられた秘密となっておりまして………。」


 なんか捨てられた子犬のような目でモジモジしだす少年。可愛い。


「その……、大変な不敬な事でありますが、御神像が発掘されたことは過去何度とあり、その都度、王家が動くのも不自然になってしまうので……。教会に任せようと、そのー、路線を変更した……という歴史がありまして……」


(デウス神像が発掘される度に王家が口出すと、王家の秘密がバレる可能性が高くなるからね。仕方ないよ)


 急に歯切れか悪くなった少年の為に、フォローを入れておく。

 

(そこの所はもう良いから、身体を乗っ取られた話をして欲しいな)


「寛大なお言葉に感謝いたします」


(それと後から俺の方から重大発表があるから楽しみにしてて)


「……? そ、そうですか。では続きを。私が神殿に到着すると意識が朦朧としだし、男の声が聞こえたのです」 


(声?)


「見つけた。と」


(他には何か言ってた?)


「いえ、それだけでした。体の自由を奪われからは、まるで夢の中に居るような曖昧な状態でありました。その後はデウス様がご存知の通りです」


 デウス神像を拝むのを辞めてまで隠していた王家の秘密を知っていたってことか。


「申し訳ありません。この不始末は私にあり、国や王には罪はありません」


 別に怒ってないから。ちょっと、からかってみただけ。それに俺に怒る権利はないんだ


(王子よ。私からの重大発表を落ち着いて聞いて欲しい)


「はい。デウス様の言葉なら、どのような発表でも受け入れます」


(俺はデウスでも神様でもないんだけど)

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