第41話


 バスに乗って20分。


 山道を上った先にあるバス停で降りて、あとは徒歩で。


 わんわん鳴く蝉と、道なりの電信柱。


 長い坂道だった。


 自動販売機すら無い道と、苔の生えたガードレール。


 車はほとんど通ってなかった。


 チョロチョロと流れる小川が、道路の脇の下に流れていた。


 若草の影が、透き通った水面の上でひょっこり顔を出していた。


 田舎だな…


 そう思いながら、ヒーヒー歩いた。


 先輩は、少しも疲れた様子も見せずに、私の前を歩いてた。



 さすが、テニス部のエース…




 「今日さ、夜祭りがあるんだけど」


 「祭り?」


 「そう。ちっちゃい祭りだけどね」



 今年はまだ、花火も見れてない。


 先週開催してた盆踊り大会。


 毎年夜、海で花火が上がるんだ。


 私たちの町のビックイベントだった。



 「よかったら一緒に行かない?少ないけど、屋台も出るみたい」


 「…あ、はい、ぜひ!」



 ジージー


 ジジジジ




 坂道を上がった先に、赤い瓦屋根の家が見えた。


 先輩のおばあちゃん家だ。


 夏休みの間、毎年訪れてるみたいだった。


 広い庭と、軒下の漆喰壁。


 畑道具が、縁側の石段のそばに立てかけられてる。


 網戸の向こうで、扇風機が首を振ってた。


 チリンチリンという風鈴の音が、屋根の下で揺られながら。

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