第40話


 「しばらく熱があったって言ってたけど」


 「だだだ大丈夫です!ご心配なさらず!」



 あーびっくりした。


 なら安心っ!と言ってUターンする。


 葵先輩の家は山の方にあるみたいだった。


 バスに乗って、田んぼの見える細道を走った。


 博多市内から電車に乗って、30分も経たないこの場所は、私たちが住んでいる町と少しだけ、似ていた。



 「お昼ご飯は?」


 「まだです」


 「どっかで食べよっか」


 「いやいやいや、大丈夫ですよ!」


 「でもお腹空くでしょ?」



 先輩はバスの窓を開けて、サラサラの髪を靡かせている。


 私は緊張してた。


 初対面だっていうのと、祐輔のアドバイスのなさに。



 (ちょっと…!何話せばいいの!)


 (お前の好きなように話せばいい)



 好きなようにって言われたって…



 先輩は私に話しかけてるんじゃなく、あんたに話しかけてるんだ。


 あんたが対応しろよ。


 せっかく会いに来てるのに。

 

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