第24話


 病院の先生が言うには、私の体は外傷もひどく、完治するにはまだ日数がいると言うことだった。


 そして、何が問題かって言うのは、母さんの口から聞いた。


 頭を強く打ったせいで、脳に大きな損傷を負ってしまったこと。



 「植物状態」だっていうことを…




 「どんな状況なんですか…?」


 「あまり良くないみたい…」


 「…でも、怪我は治るって…」


 「怪我はね…。だけど、そんな簡単じゃないみたいで…」




 私の体には、それからいつでも会いに行けるようにはなった。


 会いに行けるようにはなったけど、自分の体には戻れなかった。


 何度か試してみたんだ。


 手を当ててみたり、同じように寝そべってみたり。


 でも、ダメだった。


 戻る気配すらなかった。


 こっそり夜忍び寄って、隣で寝てみたけどダメだった。


 看護婦さんには、あとでこっぴどく叱られ…



 「だめだな」


 「うーん…」



 どうやったら戻れるのか、煙が出るくらい考えた。


 考えたが、…思いつかない。


 …それに、今戻っても、目が覚めるとは限らなかった。


 彼と話したんだ。


 「植物状態」についてを調べながら。




 「植物状態とは、大脳が機能しなくなったものの、視床下部と脳幹はまだ機能し続けている状態のこと。…っていうのはつまり?」


 「脳が死んでる…ってこと?」


 「いやいや、脳は生きてるんだろ?脳幹は機能してるって…」


 「“脳幹”って何よ」


 「…さあ」



 調べていくうちに段々とわかった。


 自分の体が、想像以上に危険な状態だってこと。


 「植物状態」になった人の大半が、6ヶ月以内に死亡するって…




 「待て待て!よく見ろ。適切な医療処置を受ければ、数十年も生きられるって書いてある」


 「…でも目が覚めないって…」


 「お前の意識はここにあるだろ!しっかりしろ」



 彼なりに元気づけようとしてくれていたが、私はショックで数日立ち直れなかった。


 …だって、自発呼吸ができないって何?


 脳に損傷を受けてるって…?



 こっそり先生にも聞いてみた。


 植物状態から回復することはあるんですか?って。


 「私」の体は大丈夫なんですか?



 って。



 …だけど




 「あんまり真に受けんなよ?」


 「…そうは言うけど、専門の先生なんだよ?私らなんかよりずっと知識を持ってる人が、「目は覚めないかもしれない」って…」


 「まだ可能性の段階だろ??お前は生きてる。ここにいる」


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