第21話



 あーでもないこーでもないと言いながら、結局、幽体離脱の話で盛り上がった。



 「幽体離脱が起こるのは、生と死を彷徨ってる時だろ?」


 「うん」


 「でもその場合、肉体は瀕死の状態にあるって書いてあるけど」


 「瀕死っちゃ瀕死なんじゃない?」


 「ピンピンしとるがな」


 「うーん…」



 あくまでネットに載ってるのは憶測でしょ?


 幽体離脱がほんとに実在してるのかどうかも怪しい。



 「魂が体に戻るのは、峠を越えてからだって」


 「峠??」


 「だから、生と死の」



 一旦その話は置いとかない?


 生と死とか、今のあんたの体には無縁なような気がする。


 大体私が乗っ取ってんだから、幽体離脱もクソもなくない?



 「どゆこと??」


 「肉体と精神が今ここにあるってこと」


 「住職みたいなこと言うなよ」


 「真面目な話してんだけど?」



 何が言いたいかって言うとさ、ほら、幽体離脱っていうのは、肉体側からしたら魂が入ってないってことでしょ?


 でも今は魂が入ってるじゃん。


 中身と器が一致してないだけで。



 「ああ、そういうことか」


 「でしょ?だから幽体離脱の線は薄いって」


 「なんでそうなるんだよ」


 「だって戻りようがないじゃん。このとーり肉体はピンピンしてるんだから」


 「じゃあお前は?」


 「私?」


 「お前の肉体だよ」



 だからそれは、今ピンチなんだって!


 それこそ、生と死の境目を彷徨ってるって感じ?


 …こんなこと言ってる場合じゃないのはわかってるよ?


 あんたの言う“幽体離脱”って言うのが実際に起こってるなら、私の方がその状況に相応しい。


 あんたの体にさえ、入ってなければ。



 「人の意識が入れ変わるっていうのは…見当たんないな」


 「そりゃそうでしょ」


 「のんびり構えすぎじゃね?ちゃんと考えてる?」



 考えてますとも。


 眠れば直ってるかなって、昨日の夜も思った。


 でもダメだ。


 変わる気配さえない。

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