第20話


 祐輔の友達が、この数日間病院に来てた。


 だからラインもすごいことになっていた。


 大丈夫か!?


 とか、


 生きてるかー!?


 とか、



 涙が出るくらい温かいメッセージが。


 スマホの待ち受けは祐輔の好きなプロ野球選手。


 相変わらず、野球漬けの日々を送ってんだね。


 感心するよ。


 部活に一生懸命なのは。




 「あんまジロジロ見んな」


 「なんか言った?」


 「ジロジロ見んな」


 「なんで?私のスマホじゃん」


 「お前のじゃねーだろ」


 「今は私が「祐輔」で、このスマホは祐輔の。つまり私のじゃん」


 「さっきと言ってること違くね?」


 「そお?」



 楽しそうな高校生活を送ってるんだね。


 画面をスクロールしていると、ふと指が止まった。


 見覚えのあるものが、そこにあったからだ。



 「懐かし…」



 コイツとは、ずっと連絡を取ってなかった。


 私のスマホからは削除してた。


 ラインのトーク履歴は。



 「消せばいいのに」


 「何が?」


 「…いや、別に」



 連絡を取るつもりはなかった。


 今後も、ずっと。


 時々祐輔からは連絡があったんだけど、無視してた。


 いちいち反応するのも、めんどくさかったから。



 「お前のスマホは?」


 「私が持ってるんじゃない?」


 「連絡しなくていいのか?」


 「したいけどできないじゃん」


 「俺のスマホ使えよ」



 どうやって??


 友達検索で出てこないか?と言われたけど、そんなポンポン見つかるわけないじゃん。


 IDなんて知らないし、ニックネームだって、全国にごまんといるだろう。


 仮に見つかったとして、あんたから急に連絡が来たらびっくりする。


 でも確かに、連絡は取りたいなぁ…



 「電話番号は?」


 「知ってる…けど…」


 「かけてみろよ」


 「えぇ!?」



 ラインよりタチが悪いって。。


 あんたの声でびっくりさせたくないよ。


 変声機とかあれば話が別だが。


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