第15話


 「この、不法侵入者め」



 不法侵入者…?


 

 「誰のこと言ってんの?」


 「お前しかいないだろ」



 私…?


 なんで不法侵入者扱いされなきゃいけないの。


 大体あんた、なんで…そこに…



 「久しぶりだな」


 「…久しぶり…だけど…」



 再会の挨拶を交わしてる場合じゃない。


 どういうこと!?


 幻…覚…?



 「お前にしか見えてないと思う。多分」



 …は?


 私にしか…?



 「ほら、触ってみ?」



 そう言いながら近づいてきて、体に触れてみろと言う。


 だから手を伸ばした。


 そしたら…




 触れ…ない…?



 嘘だと思って、何度も手を動かす。


 信じられないと思った。



 祐輔の体が透けてる。


 透けてるっていうか、光に触れたみたいに手が通り抜けてしまう。


 感触がなかった。


 それどころか、…手が、体を貫通して…



 「な?言った通りだろ?」



 …な?


 じゃなくてさ…



 …え


 …なんで??



 説明した気になっている祐輔。


 けど、全然理解できてない。


 すぐそこにいるのに、触れないんだ。


 幽霊ですか?っていうくらい、スカスカで。




 「俺の体を返せ」


 「…は?」


 「何勝手に人の体に入ってんだよ」




 …バッ


 勝手に入ってるわけじゃないし!


 気がついたらあんたの体に入ってたんだって!


 そもそも、なんで触れないの…?


 ほんとに幽霊…とか…?




 「俺もよくわからないんだよ。目が覚めたと思ったら、こんな感じ」

 


 こんな感じ…って


 看護婦さんは祐輔のことが見えてないみたいだった。


 というか、ガラスの向こうに映ってない。


 ハッと思って、手鏡をかざしてみた。


 そしたら、やっぱり…



 「映らない…」


 「ほんとに幽霊なのかもな」


 「なのかもな…って、なんでそんなに悠長なの?」



 ほんとに幽霊だとしたら、やばくない?


 死んでるってことにならない?


 …あ、でも、私が体に入ってるってことは、肉体はまだ、健全なわけか…




 うーん???

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