第13話
今戻っても、かなり大変な思いをするんだろうなって思う。
…けど、アイツの体に入ってるよりは数倍マシ。
先生にも尋ねてみた。
魂が入れ替わることがありますか?って。
ハハハッ
って笑われただけで、まともな回答は得られなかった。
…そりゃそうかって話ではある。
普通はこんなこと起こらない。
そんなのは私もわかってるよ!?
…だけどさ
…ほんとに、どうやって戻るんだろう…
ネットで調べてみたいんだけど、パスワードがわかんなくて開かないんだよね…
アイツが設定しそうなパスワードってなんだろ
誕生日?
それとも、野球にまつわること?
…わかんないなぁ
間違えまくるとロックかかっちゃうんだよ
だから触らないようにしてた。
おじさんも知らないって言ってた。
ためしに誕生日で打ってみようかな
あ、「0000」とか?
アイツのことだから、初期設定のままいじってないかも。
…どうだろう…
「おい」
カーテンが揺れて、誰かの声が聞こえた気がした。
病室には誰もいない。
おじさんは仕事に戻るって言って、さっき出て行った。
祐輔の友達とか学校の先生とかがお見舞いに来てたりしたんだけど、今日はもう夕方だし、多分誰もこない。
差し入れをたくさん置いていってくれている。
看護婦さんからは控えめにするように言われてるけど、お菓子とかがあるから、つい手を出したくなってしまう。
…ってか、よく考えたら、アイツの体だよね?
…ってことは、体重とか気にせずに食べれるってこと?
え、…そうだよね??
大好きなじゃがりこが目の前にある。
こんな時間だし、さっき夕食も食べたけど、これ、…食べてもいいやつ?
「…おい」
また、誰かの声が…
ついに幻聴が聞こえるようになったか。
部屋には誰もいない。
それは間違いない。
色々ひどい目に遭ってるんだ。
これくらい許してくれるよね?
そもそも、好きでこの体に入ってるわけじゃない。
気がついたらアイツになってて、見たくもないものを見るはめに…
ショック死レベルのストレスを解消しなきゃ、私の身がもたない。
男の子なんだから、多少太ろうがなんだろうが構わないでしょ?
じゃがりこの封を開ける。
ポテチとかマーブルチョコとか、おまけにポッキーも。
よりどりみどりですねぇ
人生で一度は、カロリーなんか気にせずにお腹いっぱいお菓子を食べてみたかったんだよね。
今までは次の日が怖くてできなかったけど、今ならッ
「おいって!」
耳元で呟く声が聞こえて、ハッと振り向いた。
後ろには壁があるだけで、誰もいない。
…まじで何…?
幻聴にしてははっきりしてる。
はっきりしてると言うか、どっかで聞いたような…
じゃがりこを頬張ろうと、手を突っ込んだ。
欲望のままに口を動かそうと思って、鷲掴んだそれを持ち上げながら、あーんって口を開けた。
さっきも言ったけど、部屋には誰もいない
…いない、はずだった…
持ち上げたじゃがりこを口のそばで離そうと、顔を上げた時だった。
目の前に、人影が映ったのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます