第11話
何度か集中治療室に入ろうとした。
でもダメだった。
普通の病棟に移されたとは言え、まだ安静にしてなさいって言われてる。
安静にしてるも何も、個人的にはそんなことしてる場合じゃない。
私の体があの部屋の中にあるんだ。
看護婦さんが私のことを宥めて、ひとまず病室にいてくださいと言ってくる。
腕に刺された点滴。
頭に巻かれた包帯。
頭を強く打ったらしく、軽い脳挫傷を起こしてるみたいだった。
だからまずは経過観察をして、おとなしくしてろということだ。
…だけど
なんでアイツの体に入ってるんだ?
ずっとそのことばかり考えてた。
電車に乗ってたって言うけど、祐輔の顔を見たのは中学の卒業式以来だ。
それ以来、連絡も取っていなかった。
理由はまあ色々あるんだけど、そんなことより、アイツが同じ電車に乗ってたってことが、一番の驚きだった。
確か、市内の高校に通ってたんだっけ…?
友達づてに聞いたことがある。
私にとってはどうでもいいことだから、スルーしてた。
私立だか公立だか、そこら辺はよくわかんない。
アイツはバカだから、公立なんかには通わないか…
とりあえず、同じ電車に乗ってたって、今まで全然見かけたことないけどな…
たまたま…?
いやいや、もう2年も高校生活を送ってんのに、この前に限って…?
祐輔のカバンが、病室にある。
グローブとボール。
あと、筆記用具。
学生証とか、財布とか、色々入ってた。
ファッションに興味がないアイツらしく、質素というか簡素というか、いたってシンプルな私物ばかりだ。
センスゼロの謎のキーホルダーは、相変わらずだった。
昔から、変なアクセントをつけたがるんだよね。
理由は聞いたことないけど。
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