俺の体を返せ

第10話











 目が覚めて以来、夜は寝付けなかった。


 頭痛はしばらく続いて、時々、記憶が覚束なくなる。


 水曜日の朝だそうだった。


 電車事故が起こったのは。



 「7月22日の朝、千葉県千葉市内で起こった電車事故ですが…」



 テレビをつけると、一日中電車事故のことが流れている。


 線路から大きくはみ出した電車。


 粉々に飛び散った線路。



 地面には、大きく抉れたようなクレーターができていた。


 どうやら、電車が脱線してしまったのは、空から落ちてきた謎の飛来物が、機体とぶつかったことが原因らしい。


 その“飛来物”がなにかは、まだはっきりしていないらしかった。


 ただ監視カメラの映像と、地面に空いたクレーターの跡から、隕石じゃないか?という憶測が世間の中で広まっていた。


 おじさんも、その1人だ。



 「しかし、運が良かったな。大勢の人が亡くなったそうだ…。乗っている車両が違っていれば、お前も…」



 私が祐輔の体に入っていることは、まだ、誰も信じてくれていない。


 自分でも整理できていなかった。


 誰かの体の中に入ることなんて、常識的にあり得ないっていうのと、…まあ、諸々。


 どう説明すればいいのかわからないし、理解しようにも「どうやって?」って感じ。


 あんまり周りには言わないようにしてた。


 言ったって、誰も聞く耳を持ってくれないもん。



 「記憶はまだ戻らないのか…?」


 「…えーっと、うん」



 私のことを祐輔だと思って、おじさんは接してくる。


 それにどう対応すればいいのかわからなかった。


 アイツのこと、よく知らないし、ラインだってたくさん来てるけど、パスワードがわかんなくて開けない。



 「そうか」



 おじさんには悪いけど、なんとかして私の体に戻らないと。


 …でも、どうやって…?

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