第016話 入浴
優雅きわまる洗濯が終わると洗濯物の上に脱水板をかぶせて本格的な入浴である。絵巻物で見た通りに真似てシャボンを掌に乗せてふっと息を吹きかける。他愛のない戯れだが、ノエルにはこれが一番自分が伯爵夫人としての実感が持てる行為だった。もちろんメイド時代からやっていたが。
30分ほども入浴して洗濯物の脱水もそろそろいいかな、というくらいになってノエルはようやくバスタブから身を起こした。そしてそのままバスタブの栓を抜いてバスタブ内部も軽く磨く。浴室全体の掃除は金曜日と決めてある。土日はアルバートが長風呂をする、あるいはアルバートと一緒に入る事が多いのでその前日だけやっとけばいいやというサボリ根性である。
ちなみにこの浴室はノエルが普段使っている使用人部屋のすぐ横、つまり二階の洗面台の鏡を正面に見た時の左手にある。ノエルはこの洗濯兼入浴で着ていたものも一緒に洗濯してしまっているが替えの下着や衣服は用意していない。そして今現在この家にはノエル以外誰も居ない。
もちろんそんな事をする伯爵夫人が居る筈はないが、例えばバスタオルで身体を包み、或いはそれすらせずに全裸のままで、浴室のすぐ横にある使用人部屋にさっと移動してそこで新しい下着と衣服に身を包むという行動は不可能ではないのである。
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