ここからは洗濯だが実は入浴も兼ねている。湯加減を見て程よい温さを確認するとノエルは衣服を脱いで全裸になった。そして他の洗濯物と一緒に今まで着ていた服もまとめて入浴しながら洗うのである。ふんふーん♪

今のノエルは一応伯爵夫人ではあるが、本来は修道女見習いでありメイド見習いである。当然毎日入浴などできる筈はなく、これはかなりの贅沢行為なのであった。そしてノエルのこの贅沢行為は伯爵夫人となる前、まだただのメイドとしてこの家にやってきた直後から許された特権でもあった。

──お風呂サイコー──

バスタブから手を伸ばして洗濯板で洗濯物を洗いつつ、少し冷えたら湯舟に浸かり、逆に熱くなったら火かき棒を伸ばして炭を遠ざけたり蛇口から水を足したりして温度を調節する。この蛇口というものもミクレンド川の大いなる恵みのひとつであり、なんとハンドルをひねるだけで水が出てくるという神の奇跡の具現だった。修道院に居た頃は毎日まいにち、本当に何度もなんども水汲みをしなくてはならず、今のノエルからすればあの生活のどこに神の加護があったのかと言いたくなるのであった。