第010話 起床

「おはようございます。朝ですよ」

ノエルは夫を優しくゆすって起こす。他の人がいる時はある程度は気を使うが、二人きりの場合は彼らはごく普通の若い新婚夫婦であった。従ってゲストルームのノックなどしないし扉の前から声をかけて目を覚ますなどという無駄な事もしない。


「……ン……」

朝が弱い夫は、しかしそれでも行政府の長としての責任感からのそのそと半身を起こした。しかし眠そうである。というかその状態で半分寝ている。仕方がないので毎度お決まりの殺し文句を言う。


「起きてください。六代目バークロンド伯アルバート・リングフォード様」

その一言で夫の眉間に皺が寄った。そしてこれまたお決まりの返事が返ってくる。


「……なりたくてなったんじゃない……」

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