第009話 部屋

ノエルは普段使用人部屋で寝起きしているがそれにはいくつかの理由がある。


まず夫たるアルバートが三階の主人部屋ではなくほとんど二階のゲストルームで寝起きしているのに自分が三階の夫人部屋を使うのは申し訳ない。


ついでこっちのほうが水場も調理場も近いので便利であり、さらに修道院暮らしからメイド時代に至るまでがノエルの人生の大半を占めているのでこのほうが落ち着く。


極めつけは夫人部屋の不便さであった。夫人部屋はこの官邸にあるいくつかの部屋の中で一番立派で調度品の価値が高くはあるが、それは歴代の夫人の置き土産ばかりではなく、必要最小限主義ミニマリストの気があるアルバートが「いらない」と思った家具を片っ端から夫人部屋に放り込んだせいでもあった。

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