第003話 就寝

夫アルバートは本来とても入浴好きである。休日など一日に三回も入浴するし、その入浴時間も長い。メイドとしてこの官邸に来た当初は食事時間以外はほぼずっと浴室に居るような人だった。


しかし二日間で1時間しか寝れない激務の後でさすがに入浴などする気にはなれないのか、スープを飲み終わると食堂の奥、本来はゲスト用の寝室にそのまま倒れ込むように入っていった。なんとなくお休みの挨拶が聞こえた気がする。


「お疲れ様でした」

ノエルはそう言って秘書の人と護衛の人に深々と頭を垂れた。ノエルのその仕草を見て護衛の人が苦言を申し添えた。


「ノエル様ももうメイドじゃないのですから」

ロキシボ護衛官は少し砕けた口調でそう言った。


「…申し訳ありませんが明日は8時から会議がありますので7時にはこちらを出なくてはなりません。伯爵夫人におかれましてはご承知おきを」

リーニキッジ秘書官は眼鏡を光らせてそう言った。


「またしばらくは帰ってこれないのですか?」

ノエルは諦めつつも確認をした。リーニキッジ秘書官は若さに似合わない苦み走った顔で説明してくれた。


「ここだけの話ですが予算の関係で些か煩雑な状況で」

うわあ大変そう。

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