第15話 悪巧み(三人称視点)



  ◇



 柚右たちのいる場所から少し離れた森の中。


「お前もっと働けよ、おい」

「死にてぇのか?」

「わ、分かったって!やるよ.......」


 この場を仕切っているのは1人の少年。

「お前はいいよ、あっちで狩りをしてきてくれ」

「分かった!」


 彼らは、これまでとは違うカーストの元、生活していた。


「えっと......私たちは.........?」

「お前たちは何もしなくていいよ」

「えっ、そんな、悪いじゃん」

「な、何があったら言ってね、頑張るから」


 男子のカーストが割り振られ、優遇されたり、蔑まれ使い潰されているのを目の当たりにした女子たちは、少年の様子を窺うようになっていた。



 少女たちの言葉を聞いた少年の口が、待ってましたとばかりに三日月型に裂く。

「じゃあ、こっち来い」

「わ、分かった!」

「何が持っていくものある?」

「う、ウチたちに出来るかな......」





 

   ◇




 

 少女たちの尊厳は、跡形もなく壊された。

 使えそうにない者から順に純潔を奪われ、その後も使い回されることが決まっていた。

 したがって、「どれだけ自分の利用価値を示せるか」が彼女達の生命線となってしまったのである。

 尊厳を犠牲に命を守ってもらえるから、と割り切れるはずもなかった。


 いつ自分の番が来るか分からない恐怖に、少女たちの精神は摩耗していった。



 


 その中には、神崎 紗蘭かんざき さらも含まれていた。


 以前、犯されてからすぐに逃げ出したこともあり、男子たちの警戒は主に彼女に向いていた。


 .........が、彼女はもう、抵抗する気力がなかった。

 抵抗する気がない訳では無い。

 衰弱するよう、食事量を制限されていたり、なれない環境下で少ない睡眠しか取れていない、ストレス過多.....など、挙げればキリがないだろう。


 逃げられるなら逃げ出したいが、できない。

 それが彼女の現在の考えであった。


 男子たちも、女遊びにばかりかまけている訳ではなかった。





 少年が選別したのは、を持っているかどうかである。


 彼は、自身が「○○のスキルを持っている」と仮定し、何度も何度も試した結果、「鑑定」のスキルを持っていることが分かったのである。


 他人のステータス・ボードも、、自分のステータス・ボードも見ることができるようになった彼であったが、これは偶然であった。


 本来、ステータス・ボードに書かれてある文字は読めないはずである。


 彼は、実際文字が読めているが故に碧のでまかせであると思っているが.........


 彼はスキル「鑑定」を持っているわけでは無かった。

 


 そもそも「鑑定」なんて勇者なら誰でも持っているスキルである。

 枠としては本来の「言語理解」と同じなのだから。


 それでは、何が彼をそうさせたのか。


 それは――――


 彼の適正が、「シグルム語理解」だった事である。


 適正は、スキルでは無いので、ステータス・ボードには、注視して「看破」でもしない限り見えない。

 

 が、これはパッシブスキルなどに該当する、使

 

 見えないのには理由があるのかと思いきや、未だ解明されておらず、先天的な技能も、後天的に備わった技能も、はたまた潜在的な適正まで表してくれる訳だが、現状はっきりしていないものも結構多いため、初めて発見した古代の研究者たちが、代々秘密裏に継承していたことから、現代に渡るまで広まっておらず、その存在ですら、知っているのは国家お抱えの研究者一族、その一番弟子のみだろう。

 昔には、『家事』という適性だけを持った剣聖がいたのだとか。



 

 少年は、常に口角を上げ、何かを楽しんでいた。


「碧......待ってろよ........俺の方が強いんだ、異世界で俺より目立つんじゃねえぞ.................」




  ――――その瞳は、嫉妬と狂気を映し出していた。







 

 

    ◇



 女神。

 それは、世界の均衡を保つため存在し、次元を司る力を与えられた絶対神の使徒の総称。

 干渉値と呼ばれる、担当惑星上の生命が天寿を全うした際や、世界が魔王や魔神を生み出した際に女神の元へ集められるもの。

 その、この世界に干渉するために必要なものをやりくりして、担当惑星を平和に保つのが主な仕事だ。



 そんな女神の中でも、女神リテュエリーズは、他の女神とは違った。一線を画して。

 平和にかこつけて、干渉値を使い次元旅行に行ったり、バカンスに行ったりと、自由気ままに干渉値を費やしていた。


 勇者を召喚しようと思ったのも、彼女からすれば『気が向いたから』だ。

 干渉値は最低限に、だから人数も減らしたし、

 なんなら、

 せいぜい娯楽になればいい。

 それだけのために、柚右たちは振り回されることになったのだ。




 それを、本人たちが知るのは、まだ先の事であった。

 


 


 

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