第9話 ステータスの記載範囲がおかしい


  ◇


 事の発端は、女子のステータスを見た時だった。


 橋津、松下、一ノ瀬の順に見ることにしたんだが…


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橋津 円香 17歳 女 レベル:1

 

筋力:7

体力:10

耐性:7

敏捷:7

魔力:20

魔耐:7

スキル:魅惑の所作

B: 71 W: 54 H: 75

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 ――――ッッッ!?!?


 なんか見てはいけないものまで見てしまった気がして、全力でバレないように目を背けたんだが.........。


「……あ、あ〜、えっと…橋津のスリー、んんっ、スキルは『魅惑の所作』だなぁ….........っと」

「どうして目を背けるの?」

「え?い、いや?目背けてないよ?」

「……」

「….........ど、どうした橋津。その目は」


 内心冷や汗がダラダラ。実際汗でバレるんじゃないかと思ってそっちに対しても緊張感が拭えない。ば、バレて…ないよ、な.........?


「ふぅん。じゃあ次。やったら?」


 関心を無くした、とまでは行かないんだろうけど、とりあえず言い逃れることが出来た…。なんで女子のステータスにだけいらんオプションあるんだよおかしいだろ!?これこの世界の主婦の方みんなこれ見てダイエットしてるの!?便利すぎるにしてもお節介が過ぎるぞ!?


 …………でもこれはこれから起きることのきっかけでしかなかったんだ.........。『話術』もうちょっと働いてよ.........。



~~~~~~~~~~~~~~~~~


   ◇

 


 20~30分が経ったかな、という頃に、残りの女子2人のステータス確認が終わった。女子の声帯を男の俺が真似するのって生物学的にも間違ってるよなって言えるくらいむずいわ!裏声でも出るかあんな高音域!!つ、疲れた.........。

 橋津の直感が働いたのか知らんけど俺に疑いの視線を向けてくるってのもあって、疲労感とか緊張感とかもろもろでヤバい。風呂とかベッドがあったら今すぐ飛び込みたい.........。


 幸い、『冒険家』というスキルを使うことができるし、サバイバルに関しても森の中だけど余裕。『狩人の直感』まであることだし過剰なくらいだ。

「テント作るから張っていって、よろしく」

 「了解」

 「何人でまとまって寝るの?」

 人数配分か.........考えてなかったな…。1人1つずつ作ることだって時間をかければできるし、.........魔力だって使ってかないと増えないってよくあるテンプレだしなぁ。

 「1人がいい人は1人で寝ればいい。一緒に寝たい人が居るなら大きめに作ってもらえばいい。でしょ?」

 橋津の鶴の一声…。ま、いっか。でかいの何個か作るか、普通サイズいっぱい作るかの違いだしね。橋津は…松下か一ノ瀬と一緒に寝るのかな?俺は1人で…いっ

 

 「柚右は、私と一緒ね。後で、来て」

 「はあぁ!?...............んんっ」

 橋津から囁かれたという事実とその内容にでかい声を出してしまった。はぁ??どういうことなんだ…。なんか俺の思考回路を読んだみたいに的確なタイミングで話題突っ込んでくるし、言ってることの意味も全く意味が分からん。あいつに何のメリットが…。というか何のために.........?

 「わっかんね…」

 独り言をボソリと言ってみるけど、何も変わらないし、ひとまずは集中してテント張りまで終わらせないと。





~~~~~~~~~~~~~~~~~


    ◇

 


 夜になる前にテント?に見えなくもない異世界製の寝所が全員分完成した。魔力カラッカラになって脱力感がえぐい。男子は人数分作るのだるいから結構広いやつ2個で我慢しろって感じ。女子は仲がいいだろうし特別広くしようとも思ったけど、男子と同じくらいの広さのテントを2つ繋げることにした。繋げて、仕切りを作らなかったから柱を縁に沿って立てて固定した。よし。全員分終わったし、俺は少し離れた所で1人用のテント作って寝るか.........。

 みんなは、体操服が汗でベトベトなので、川の下流で汗を拭いたり、着替えたりしてる感じだ。制服に着替えるのも何だし、体操服を洗って乾くのを待ってる奴もいるっぽい。

 今のここの気候が日本の初夏の時期の気候と同じくらいくらいでよかった……。冬とかだったら水浴びなんて出来たもんじゃなかった。

 俺も結構疲れたし汗でびしょびしょだ。みんな洗い終わって着替えて待ってるはず。

「おーい、テント出来たぞ〜〜!」

 川まであと3メートル、木々に囲まれてて奥は何も見えないけど、声をかけながら近づく。

 「えっ!?ちょっ」

 「嘘っ!」

 「.........」

 なんか聞こえたか…?

「おーい、ってッッッ!?!?」

 視界を覆う木々を押しのけ、川に着くと、ーー女子が水浴びをしていた。

 橋津は、控えめな胸に可愛らしいピンク色の乳首。シュッとした体型で、身長156cm。らしい。松下はDカップ(馬鹿男子情報。俺はバストの数字とか本人見ても何カップかなんて分からん)の胸にくっきりとしたお腹のくびれ、そして張りのある尻。正にボンキュッボンと呼ばれるであろう見事なプロポーションだ。一方、一ノ瀬はAカップ(略)で、割と胸が小さいことを気にしている身長170cmのスレンダーな体型の持ち主だ。ラノベでもよくあるけど、女子からの告白も少なくなかった。艶やかな黒髪は、彼女の魅力を引き立たせている。

 ふぅ。解説終わり!回れ右。ダッシュ!!ここまでに1秒もかかっていないはずだ。ここまでというのは解説時間は含まれてないからな?

 傍にタオルを置くのを忘れない!好感度はさり気ないところから、なはず!!なんなら既に好感度は最低まで落ちてるという説もあるけど気にしたら負けだ.........。後から川を見ていて何も見えなかったと言えば何とかなる!!きっと!!多分んんんうおおぉ走れ俺!!


 結局.........体を拭くことは、出来なかった。




「え?あれで逃げるの…??」

「意気地がないの次元じゃなくない?」

「…見るならちゃんと見て欲しかった」

「いや、それもそれで…恥ずかしいし…」

 .........。

 沈黙が、降りる。

「でも、今からお説教の時間。一緒に怒ることが増えただけ」

「そっか、そうだね」

「でもホントなの?あのステータス?ってやつにウチ達の…その、スリーサイズが載ってたってゆーのは」

「あの視線の動きを見たら分かる。バレバレだった」

「そっか…そっか…お嫁に行けないね!あはは…」

「お嫁に行けないなんて言葉、最近聞かない」

「冗談だよ冗談。とりあえず、こんな世界に来ちゃったからには、生き残らないとそんなことも言えないんだから」

「碧君ならやってくれる、よね?」

「柚右なら、絶対」

「今日ずっと思ってたんだけど、橋津さんのその碧君に対する信頼ってどこから来てるの?昔からそんなに関係あったっけ?」

「なかった。けど…」

「けど…?」

「いきなりこの世界に来て、最初に状況を整理して、頼れることを言ってくれたのは柚右。一目惚れ?だと思う。吊り橋効果って言われるかもしれないけど、私は本気」

「うわぁ、確かに、言われてみると顔も整ってるしね…行動力もいざと言う時にはあるみたいだったし、守ってくれそうって感じがするよね」

「この世界、一夫多妻制だと思う?」

「何をそんなにニコニコしてんの?」

「いやぁ、この展開は碧君の異世界ハーレムかと思って」

「むぅ。私だけ、とはいかないかも」

「うーん、クラスの男子に良い奴居なかったしね…」

「結局土壇場で何も出来ないのに行動してみせた碧君に陰キャだってマウント取るんでしょ?バッカみたい」

「……早く行かないと、柚右が寝るかも。もう行こう」

「そうだね」




「…………タオル、丁寧に置いてあるわ」

「気が利く。……好き」

「人数分…ウチ達がいること知らなかったのに…?」

「冒険家って男子の中の誰のスキルだったっけ?便利すぎない?それにしても…なんで3つあるんだろうね?」




 

~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

     ◇


 

「くしゅんっ!!」

 はぁ。体を濡らして拭く用と、濡れた体を拭く用と、予備で作って持ってきてたタオル、偶然にも3枚あったから置いてきたけど、我ながら気が利くと思わない?まぁ、お陰で心臓飛び出るかと思ったし、顔赤いし体拭けなかったし散々だ…。ざっと濡れてないタオルとメンズビオレで体を拭いて、制服に体育終わりに着替えとして持ってきてた下着だけでも着とくかね…。



 と、田村と川上が目の前にいるのが見えた。え、こわっ。なんか黒いオーラ纏ってんだけど……幻覚じゃないよね?


「碧ぃぃぃぃ!!」

「っ、びっくりした。なんだよ急に」

「お前、女子の水浴び覗いただろう……羨ましいぞお前ぇぇ」

「俺らが覗いてたら今頃海の藻屑になってたはずだ!なんでお前だけ!お前だけ!ズルいぞ!ずるいずるい!」

「いやガキか。そういうところ出すからだめなんじゃないのかね……」

「くっそ俺もラッキースケベに逢いたい……せっかく異世界に連れてこられたんだ。いい思いをしたいに決まってる.........」

「ああ妬ましい妬ましい……碧めぇぇ碧めぇぇ」

 なんか川上の頭の上からゆらゆら黒いモヤが見える.........!!怖いマジで。

 そうこうしてる間に男子全員集まってきて、正座させられ怒られた。なんでや。



 酷い時間を過ごした…………。さっさと終わらせないといけなくなったじゃんか……。

 近くに洞穴みたいな所があったからそこに作ろうと思う。スキルを使っている時は思考回路がどうこうされる、というより、行動だけが自動化されてる、みたいな感じだ。別のこと考えてても、そうじゃなくても、同じのができるっぽい。

 俺は、さっきの光景を忘れられずに悶々としていた。流石にあれを見て興奮しないのは女のことが好きな男子女子としておかしいとまで言い切れる。あの3人は、クラスの中でも特に容姿が整っていたからな。このムラムラをどこへやるべきか……。まあ、抑えないといけないんだけどさ。

 クラスメイトだから、という訳じゃないけど、こういう緊急事態に乗じて襲おうとする奴って人間としてダメだと思うんだよね。相手がそれで傷ついてもつかなくても、合意はいるじゃん?

 はぁ.........。この状況だと1人でするにしても場所と時間がないしな.........。生殺しだ。仕方ないんだけども。


 ………………あ、そう言えば!寝る前に来いって言ってたっけ……?

 どうしよ、あの出来事あった後にしれ〜っと会える自信が無い!スリーサイズについて聞かれた時もだけど、肝心な時『話術』使えなくなってない!?困るんだけどそれは!?

 ……眠いんだけど。魔力不足かな、、。

 行かないと、いけないか…。特別広く作ったテントだから、残りの3人も居るはずだよな…。ああ、行きたくねぇ…。

 あれだよ、やらかしたこと先生が知ってることを察して、「さ、先に言わないともっと怒られるよな…」って思って先生に言おうとする時に似た緊張。分かるか?


「よし、行くか…」

 時間は日の沈み具合を見るに、19時とかかな?さっきまで明るかったんだけど、結構暗くなってきた。魔物とかが出ないように、便利な冒険家グッズの魔物避けのアイテム(ホントにこの世界の冒険家全員の荷物こんなの入ってんのか?ハイテクすぎじゃん)と、近くに来たら音で知らせてくれる鈴をテント周りに張り巡らせてるから、危険は少ないと信じたいけど…。


「と、着いたか…」

 気持ち離れた所に自分のテントを作ったから意外と遠く感じたけど、考え事してる内に着いてしまった。

「碧だけど、入っても…いい、か?」

 さっきの事があったから、とりあえず確認を取る。

「ん。どうぞ?」

 橋津が出てきて入れてくれた。言葉の節々に棘だったり熱だったりを感じるんだけど、それって冷たいし熱いし大変なんだが?

「お、じゃまします」

 割とガチで邪魔なんじゃないかと思ってるんだけどね?

「広く作ってくれてありがとう、碧君」

「4人で寝ても全然広そう」

「そうか、それは良かった…」

 …………?……………………?今…4人って言ったか?

「今なんて――――」

「柚右。正座」

「え?」

「柚右。正座」

 橋津の突然の命令に理解がと追いつかない。

「え?いや、同じこと言って欲しい訳じゃなくてだな…」

「せ・い・ざ !」

「は、はい」

 これまでに無いオーラを纏っている橋津と、その後ろにいる松下、一ノ瀬の圧に負け、体が勝手に正座をした。

「正座させられてる理由、分かる?」

「さっぱり分からん」

 俺が言うと、橋津達はむっとした顔になり、

「「「……。」」」

「は、はぁ?ど、どうした急に.........」

「嘘が下手」

「い、いや、だから……」

「どうなの?」

「本当に?」

 

「え?いや、何が?」

「ふぅん。柚右、逃げるの?」

「いや、は?そりゃさっき間違っては、裸を見たことは謝らないとなって思ったけど、正座させられてる理由ではなさそうだし、マジで分からん。逃げてないって」

「スリーサイズ」

 ………………。ふいっ。

「目、逸らした?」

「そ、逸らしてないけど?」

「まだ、誤魔化す?」

「見たの?」

「マジで何の話か、分っかんねぇなぁ………」

 正に四面楚歌。ここは俺に逃げ場のない敵陣だ。かといってここで認めてしまうと、3人のクラスメイトの女子のスリーサイズを見ただけでなく、水浴び覗きまでしたマジの犯罪者であることを自他ともに認めなければならないということ。用法違う気がするけど緊急事態だから許して欲しい。


「視線」

「…?」

「私たちのステータスを見た時、視線が泳いでた。私に伝えてくれる時も、歯切れが悪かった。これでも、何も無い?」

 バ、バレてたぁぁぁぁ~~~~~~~~!!

「……えぇっと。あれだ。確かにスリーサイズ、載ってたよ。咄嗟に視線逸らしたけど、まさかステータスにスリーサイズが書いてあるなんて思ってなかったから、取り乱したの、バレてたのか…。見たのはごめん。本当にそう思う」

「なんで、隠そうと思ったの?」

「知らぬが仏っていうか…俺しか読めないし言わなきゃ何とかなるって思ったから、かな。少なくともスリーサイズまで乗ってるんだけどっていう勇気は俺には無いからな」

「……んぅ」

「……顔が熱い…恥ずかしい.........」

「のせっちも?ウチも熱いわ…」

「悪かったよ、ごめん.........」

「ホントにそう。私は傷ついた。責任取って」

 …………橋津は俺をどうしたいんだろうか。

「水浴びの時もそう。ジロジロ見てた。お嫁に行けない…」

「それウチが言った台詞じゃん、古いって言ったの円香ちゃんだったよね!?」

「は、はぁ?責任って、どうしろと」

「今は、言わない。一緒に寝て。ここか、柚右作ったテントで」

「………………」

 脳が処理するのに時間がかかった。

「…つまり?お前等3人とここで寝るか、1人用で作った俺のテントで橋津と2人で寝るか、の二択しか俺には無い、と?え?ガチで言ってる?」

「断ったら、今日あったことみんなにばらす」

「えっと…他の選択肢とかは…」

「………」

「だぁぁ、分かったよ畜生!寝りゃいいんだろ、言っとくけど、どうなっても知らないからな!」

「ん!」

「俺はなんでそんなにお前が嬉しそうなのかがさっぱり分かんねぇよ…」

 話は終わった、よな…?緊張が解け、安堵するがすぐに、

「裸見られたことについて、まだ話はあるよ?」

「まだ終わってないよ?」

 松下、一ノ瀬が黒い笑みを浮かべながら幽鬼のようにゆらゆらと近づいてくる。本能的な恐怖すら感じてくる。

「…え〜〜っと.........。き、綺麗、だった、よ?」

 必殺!褒める!これしか俺には残されていない。これが起死回生の一手となる、はず!

「…………ぅ」

「……そう?」

 2人とも落ち着いてくれた?っぽい。って痛ァ!!正座してた俺の足を橋津か踏んできたんだけど!?え、何で??

「むっ」

「え、、なんで」


 この異世界生活は波乱万丈なものとなるだろう。絶対そうだ.........。胃が痛い…。


 こうして、俺は自分用のテントに、橋津と行くことになったのだった。







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松下 優菜 17歳 女 レベル:1

 

筋力:6

体力:10

耐性:6

敏捷:5

魔力:30

魔耐:30

スキル:精霊の祝福

B: 89 W: 58 H: 86

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一ノ瀬 春香 17歳 女 レベル:1

 

筋力:8

体力:12

耐性:8

敏捷:9

魔力:8

魔耐:8

スキル:魔法適正(中級)

B: 70 W: 56 H: 82

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