5月13日 17:00 東海PL第5節
『皆さまこんにちは。この時間は東海プリンスリーグ第五節の中から、5月11日に開催された深戸学院高校対高踏高校の試合をお届けします。実況は佐久間サラ。解説は樫谷高校監督の藤沖亮介さんです。藤沖さん、よろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
まずは四節終了までの順位表が出てきた。
『ホームの深戸学院は2勝1敗1分の5位。一方の高踏高校はここまで4戦4勝の首位です。この状況をどう見ますか?』
『高踏はJの下部組織との戦いを3試合終えて全勝です。元々高校最強と呼ばれているわけですから、このまま順調に勝ち点を伸ばしていきそうですね。一方の深戸学院ですが、ユースからの転籍組である原野選手、百草選手、小城山選手がまだ登録できない状況ながら5位というのは悪くない結果だと思いますよ』
続いて、両チームのスタメンが流される。
『ホームの深戸学院はGKが1番宍原隼彦、DFは2番川端鎮一、3番森蹴人、5番谷端篤志、19番中村徳人。MFは6番木里翔太、7番外山大哉、8番清水竣。FWは9番鈴木楊斌、13番松原疾風、18番竹内豪太という布陣です』
『注目は長身の2年生FWの竹内君でしょうか。去年は粗削りなところがありましたが、この春はここまで3ゴールと好調です』
『一方アウェイとなります高踏高校は、GKが12番の須貝康太、DFは5番神津洋典、9番園口耀太、11番立神翔馬、13番久村護。MFは6番陸平怜喜、14番司城蒼佑、20番鈴原真人。FWは7番瑞江達樹、8番稲城希仁、10番浅川光琴という布陣です。高踏高校は第3節からGKが須貝を起用していますが、これはどう見ていますか?』
『3節の時点では鹿海君の調子が悪いのかなと思いましたが、3節、4節と守備が完封していますからね。須貝君も元々能力の高いGKですので、今はレギュラーになっていると見ても良いのかもしれません』
『先日のU17代表でアジア一になった水田明楽もまだ出ていません』
『彼の場合はチーム戦術との兼ね合いがありますね。代表では低めのラインでしたが、高踏はハイラインを敷いています。まだ適応しきれていないのでしょう』
試合が始まった。
深戸学院は4-3-3のフォーメーションであるが、トップ3人の配置は今までのようにウィング2人と中央1人ではなく、竹内を頂点に鈴木と松原がその下にいるという布陣である。
『これはパッと見た感じですと、北日本短大付属が採用していた布陣にも見えますね』
北日本のようにどこまでも、という風ではないが、一列程度のポジションのズレはそのまま修正せずにプレーを続けている。
『高踏高校のボール回しは早いですからね。それに混乱しない形で対抗するにはこの布陣が最適でしょう』
『ボール支配は高踏。おっと、ここで立神が遠い距離からクロス……いえ、これはシュートでしょうか』
『立神君はキック力がありますからね。油断したところを直接狙うというのは十分考えられますよ』
前半20分が過ぎたが、高踏はいつもに比べると攻めがアバウトである。
『高踏高校、今日は遠目の距離からのシュートが多いように見えますが藤沖さんはどう見ますか』
『私もそう思います。恐らく今日はこういうテーマでやっているのでしょう』
遠目のシュートが多くなるので、警戒してコースを切る動きも増える。
『そろそろパスで切り崩すこと狙ってくるのではないでしょうか……あっと、ここもシュートでしたね』
シュートに関してもパンチ力のある稲城が少し空いたところで蹴り込んでくるが、宍原もしっかり対処している。
『深戸学院の攻撃についてはどうでしょうか?』
『ここまでシュートが打てていませんね。いつもほど高踏のパス回しがきつくないので、もう少し攻めに向けた工夫をしたいところではありますが』
深戸学院の中盤3人は強度の強さが武器で、パスの視野はさほど広くない。攻めの起点になりそうなパスはセンターバックの谷端が持った時のみ出ている。
その攻撃を受けて打開を図ろうとするが、陸平のみならず久村が前に出てきて積極的に潰しにかかる。
『久村君はフィジカルも強いし、以前よりスピードも上がっているように感じられますね』
元々、ボール周辺の守備力では、久村は陸平ともいい勝負ができる。
しかし、状況分析や洞察力の差から来る守備範囲の広さには大きな違いがあった。
この試合では一列後ろから見ている分、プレーが見えることと今までより脚力が上がったことで初速が早くなっている。その威力のまま相手にチャージをかけて潰しに入っている。
その後の展開はレギュラーCBである林崎ほど効果的ではないものの、トータルで見れば守備の貢献が勝っているようだ。
前半30分を過ぎたあたりで藤沖がつぶやいた。
『高踏はこの前半そのものが今後に向けての布石という感じがしますね』
『前半でゴールを取るというよりは、ミドルシュートを意識させたいということですか?』
『そういう印象がありますね。考えてみれば昨年も今はスペインに渡った颯田君がシュート数をかなり増やしていました。相手についてもそうですし、味方についてもシュートへの意識づけをしているのかもしれません』
しかし、と……藤沖は呆れたように続ける。
『このレベルでそういう余裕めいたことができるくらいに思考速度が上がっているとなると、相手としては溜まったものではありませんね』
『やはり4連勝でリーグ首位にいるという余裕でしょうか?』
『それもありますし、日ごろから物凄く速く考えるトレーニングをしているのでしょう』
前半は0-0のまま終了した。
「何もできなかった」と焦りに満ちた表情をしている深戸学院と対照的に、高踏サイドは「こんなものかな」という顔をしていた。
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