4月15日 17:00 県サッカー協会(東海プレミア第1節)

 4月14日の17時、東海プリンスリーグ第一節の高踏と静岡U18の試合が県サッカー協会から配信された。


 実際の試合は12日のリーグ第一節の映像であり、翌日、撮影したビデオを佐久間と解説が名古屋市内の県協会で行っていたものである。



『この時間は、東海プレミアリーグ第1節・高踏高校A対静岡エスブレスU18の試合をお送りいたします。実況は佐久間サラ、試合の解説は深戸学院高校監督の佐藤孝明さんにお願いします。佐藤さん、よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』

『高踏高校ですが、全国優勝を果たしたメンバーが全員残り、当然県内他校にとっては最大のライバルとなると思われます』

『そうですね。県内全てのチームが、打倒高踏の意識を持っていると思います』



 映像は辻佳彰と卯月亜衣、高梨百合の3人が撮影したものを編集している。


 もちろん、プロリーグの試合に比べると会場設備も撮影機材も稚拙だが、最低限見られるものとしては保証されている。


『地味ではありますが、こうした映像技術の高さで、高踏高校の練習効率が上がっていることは間違いありません。素晴らしいことです』


 佐藤も賞賛を惜しまない。



『高踏高校のスターティングメンバーですが、GKは1番鹿海優貴、DFは4番林崎大地、9番園口耀太、11番立神翔馬、15番武根駆。中盤より前は6番陸平怜喜、7番瑞江達樹、8番稲城希仁、20番鈴原真人、21番草山紫月、29番戎翔輝です。現在サウジアラビアで行われているU17に5人招集されているため、一部選手の入れ替えがあるようです』

『2年はU17の5人以外で戎君、浅川君、聖恵君が入っていますね。1年生でAチームに登録されているのは草山君ただ1人で、いきなりスタメン起用。この子がどのようなプレーをするかも気になるところですね』



 試合が始まると、まず静岡がパスを回そうとするが、稲城に追われて陸平に読まれる形で、すぐに高踏がボールをキープする展開となる。


『あっと、ここで稲城を囲んで静岡がボールを奪取。しかし、すぐに鈴原が詰めて奪い返して、草山が右サイドに大きく展開』


 草山がダイレクトプレーで出したバスに、立神が反応した。


 一発で完全に右サイドを抜け出し、ゴールに向けて斜めに走る。


 エリアまで入って充分にGKとDFを引き付けたうえで、左サイドに折り返す。


『折り返したところに瑞江! 前半10分、高踏高校Aチームが早くも先制点をあげました』

『草山君のスルーパスが良かったですね。立神君が前を向けば、推進力も強いので彼一人で決めることもできますから、相手としてはどうしようもありません』

『静岡も高めのラインでしたが、一発で打ち破りました』

『おそらくこういうパスを想定していなかったんでしょうね。高踏でこういうパスを出すとすれば、瑞江君か戸狩君くらいでしょう』


 佐藤が、「いや、本当にやばいのが出て来た」と小声でつぶやいた。


『鈴原と二年生の弦本もパッサーというイメージがありますが?』

『確かにそうですが、鈴原君と弦本君は短いパスがメインですね。テンポ良く繋ぐ中で裏を狙うパスも基本的にはショートパスです。繋ぐと思われる場面からいきなり崩しに行くパスは、これまでの高踏でも中々見ないものでしたから、私にとってもいい勉強になりましたよ』



 先制点の後、前半は動きの激しい展開となるが、どちらも追加点までには至らない。


『静岡とすると、高踏の戎君や草山君あたりにフィジカル勝負を挑みたいのですが、ニンジャシステムで陣形が変わるので、周りを確認せずにフィジカル勝負に動こうとすると、逆に稲城君や陸平君に押されてしまいますからね』

『確かに、稲城、陸平の2人がいつも通りボールをよく取っています』

『試合前に頭に入れてもどうにもならないんですよね。現状を判断して、どうプレーすべきかを判断し、周囲とも連携して適切なプレーをしない限り、集中している高踏の網をかいくぐるのは簡単ではありません』

『集中している、という言葉をつけましたが、集中していない高踏もあるわけですね』

『それは彼らも人間ですからね。3、4点リードしている終盤は、雑になっている時もあります』



 後半に入り、少しプレスが落ちると、草山が更に両サイドへとパスを散らす展開が増えてくる。


『いや~、これは厳しいですね。草山君に好き勝手やられるとまた失点しかねませんよ』


 佐藤はそう言ったが、逆に鈴原と戎が短いパスを回して、中央の瑞江が抜け出した。そのままゴールキーパーまでかわして追加点をあげる。


『これは相手にすれば厄介ですね。去年は瑞江君がチャンスメーカーとなって、スペインに行った颯田君達のゴールを増やしていましたが、草山君が入ったことでチャンスメークの質が上がっています。今年はもう一回瑞江君のゴールラッシュを見ることになるかもしれませんね』

『深戸学院としては防ぎたいですね』

『全くです。また頭が痛い夜を過ごすことになりますよ、ハハハ……』



 15分にはいつも通りに戸狩が投入される。下がるのは草山だ。


 更に戎のところに篠倉が投入される。


 そこからもチャンスは増えるが。



『高踏、攻めていますが中々3点目は奪えませんね?』

『戎君が抜けたことで、かゆいところに手が届く感がなくなりましたね。パスは繋がるしシュートも撃てているのですが微妙にズレがあって、絶好機という感じにはなっていませんよ。もちろん、静岡がかなり下がってしまったこともありますが』

『静岡は2点負けていますが、これで良いのでしょうか?』

『うーん、良くはないでしょうが、リーグ戦は長いので得失点差も重要です。同点にできる見込みより失点を食らう可能性の方が大きいのなら、これ以上傷口を広げないことも重要でしょう』



 このまま2-0で高踏が勝利し、リーグ戦初勝利を収めた。


 この試合映像は、もちろん飛躍的な回数で閲覧されることはなかったが、高踏の注目度の高まりとも相まって次第に増えていく。


 それに伴い、翌日以降の深戸学院や鳴峰館の試合も若干ながら閲覧されていくことになる。

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