11月15日 14:48 メルボルン・スクエアスタジアム
アンゴラは初戦カナダに2-1で勝利しており、現在グループ2位。
この日本戦で勝ち点を取れば最低限のノルマであるグループ3位の上位が見えてくるという点では、立場が共通している。
アンゴラは4-4-2と4-5-1の中間的なフォーメーションで、両センターハーフの間に一見して広いスペースがある。
そのため、中でボールを動かしたくなるが、これがある種の罠のようになっており、実はセンターハーフ2人を含む中盤の4人と1.5列目にいるデュネンの中央への集結がかなり早い。
更に全員、ディフェンスに必要な能力と技術が高い。中盤でボールを取ってしまうと、展開力のある2人のセンターハーフからCFのルイス・コスタを一気に狙うのがパターンとなっている。
アフリカ予選でもそうしたスタイルを取っており、更にカナダ戦でもそのパターンから点を取っている。日本との試合でも同じスタイルで来るだろう。
中に早く集まってくる守備への対処法は二つ。
広がっているサイド側にボールを回して、迂回する方法。
あるいは、相手が集まるよりも速く人とボールを回して突破するか、だ。
ただし、多分来るだろうというだけで、確証はない。
また、「こう来るから、こう対処するように」と指示を出した場合、意識しすぎて逆に考えすぎて遅くなる可能性もある。陽人は場に居合わせなかったが、県予選決勝のPK戦の前に水田が「データより自分の勘を重視したい」と言ったことはその好例だ。
従って、特に何かを言うことはなく、石代と小切間にセンターハーフ2人の中への速さを真似してもらい、城本には戻ってくる1.5列目の動きを模倣してもらい、前々日の練習に取りいれることをした。相手はこういうパターンがあるから認識しておけ、というやり方だ。
それを受けてのこの試合。
日本は前の試合から、上木葉、陸平、佃を外し、七瀬、楠原、園口が起用されている。ドイツ戦の後の打ち合わせ通り、星名と緒方はこの試合もスタメンだ。
一方、アンゴラのメンバーは前の試合と全員が同じだ。この試合でグループステージ突破を決めてしまいたいのだろう。
両チームスタメン図:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/16818093083451130938
試合開始から、日本は高踏の両輪・園口と立神が目立つ。
アンゴラはサイドに開いているように見せかけて、中にボールを回させたところで奪いに来る。しかし、相手が寄せるよりも早く反対サイドにボールを回せば、相手のサイドバックと1対1。これをかわせば3トップを含めて4対3の状況が作れる。
早速前半8分に、立神からの展開に園口が抜け出し、対面をかわしてクロスをあげる。
星名のヘッドは僅かに枠をそれた。
アンゴラ側は自分達のパターンで嵌められなかったことに気づいたようで、ポルトガル人監督のジョアン・カルロスがテクニカルエリアで早く寄せろというジェスチャーをしている。
13分、今度は左の園口から中にボールが出た。4人の中盤が一気に寄せるが、高幡、モラレスと速いパス回しから一気に右サイドの立神へとパスが通った。またアンゴラの寄せの上を行く回し方だ。
「オーマイガー」と頭を抱えるジョアン・カルロスの正面を立神が走り、対面にいるオゴゴを簡単にかわしてエリアの中へと入る。センターバックを引き付けてクロス、星名の奥にいた緒方が走り込んでそのまま流し込んだ。
注文通りの先制点。
「練習の成果が活きているようだね」
峰木の言う通り、かなり速いアンゴラの得意パターンでの寄せに慌てている様子が見られない。以降もこうやればかいくぐれるという自信に満ちたプレーで、次々とチャンスを作っていく。
アンゴラは得意のパターンでボールが取れないため、次第に自信を失ってきたようだ。プレーが全体的に迷いを帯び、動きが遅れてくる。守備戦術が乱れてくるとより日本がボールを回しやすい展開になってくる。
ただし、ボール支配の時間が増えたことでうまくいくかというと、そうでもない。支配すると支配したで、星名と緒方が何度も動きなおしをしているうちにズレを生じてきて、ポジションに乱れが出て来る。
「浅川が2人いるような感じだ」
高踏高校の1年生浅川光琴も能力は高いが、チーム戦術とのマッチ度合いでいくと良くはない。
それが2人になった分、より問題が大きく見える。
ただし、アンゴラもボールを奪ってからの速い攻め以外にはさして武器がない。
結果、日本が7:3ほどでボールをキープしているが、両チームともアタッキングサードに来た段階で手詰まりになるという、同じような展開が前半30分過ぎまで続く。
(この様子を見ると、2人同時に起用するのはこの先難しいな……)
星名と緒方はアジアカップではずっと起用されていたし、プレースタイルも若干違うので共存は問題ないように思えていた。
星名はフィジカルが強くて中盤もできるタイプであり、緒方は抜け出しが得意でスピーディーに動けるアタッカーである。
しかし、ボール保持の時間が長い時の対応を見ていると、よく似ている。戦術的な反応は似ているようだ。
2人ともまだチームに完全にフィットできていない。もちろん少しずつ近づいてきてはいるものの、まだ遠い。更に2人同時に出ているから、よりやりづらいように見える。
(どうしたものかな……)
この後の展開も含めて、色々考えているうちに前半が終了した。
1-0と日本がリード。
ただ、リードしている日本も、されているアンゴラも何かを変える必要があるように思える展開であった。
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