8月8日 17:15

 練習終了後、陽人は全員に呼びかける。


「明日までに背番号を決めないといけないから、もう少し残ってもらえるかな?」


 全員、それぞれ顔を見合わせて部室に集合する。


「背番号なんてどうでもいいんじゃないか?」


 と切り出したのは立神だ。


「そういう人もいるだろうけれど、こだわりがある人もいるかもしれないしね。特に途中から入ってきた三人は、欲しい番号が取られていたかもしれないし」


「なるほど。どうなの?」


 立神が道明寺、南羽、櫛木の順で眺めていく。



「この番号っていうのは特にないなぁ」


 三人とも似たような発言だ。


 特定の番号がどうしても欲しい、というような強いこだわりをもつ人間はいないようだ。


 納得した陽人は10番について確認する。


「ちなみに甲崎先輩は登録しないから、10番も空いているけど、誰か欲しい人はいるかい?」


「10ねぇ。最近は10番だからどうって感じでもないんじゃないかなぁ」


 立神は相変わらず乗り気ではない。早く帰りたいという雰囲気が伝わってくる。


「希仁はどう? 25だったら10に変えてみても」


 10番を好む選手の中には25をつける人間も多い。2×5で10になるからだ。25をつけるなら10番でもありではないかと思ったが。


「選択できるなら25の方がいいですねぇ。世界王座の防衛記録は25回ですし」


「あ、そういう理由なのね……」


 サッカーとは異なる理由であれば仕方がない。


 そんな中、おずおずと道明寺が手をあげた。


「だ、誰も希望しないなら10番をつけてもいいか? 今まで、でかい番号か2番とか3番とか小さな番号ばかりだったから、つけられるなら一度つけてみたい」


 確かにセンターバックが10番をつけるケースというのはほとんどない。


「ということだけど、みんなはどう?」


 確認してみるが、全員頷いている。


「じゃ、10番は尚ということで。他の皆は前回の番号をそのまま登録するよ。空いている番号には二年の先輩を入れてもらう予定なので。それでいい?」


 陽人は再度喚起したが、誰も何も言うことはない。


「うん、それじゃ、今日は終了だ。お疲れ様」


 解散後、陽人は全員の背番号のデータを甲崎に送る。


 程なくして、「了解。じゃ、これでメンバー登録をしておくよ。あと、何かあった時のため、僕も一応役員には入っておく」という返信が返ってきた。




 二日後、メンバー登録のファックスが戻ってきた。登録メンバーが最終的に決定した瞬間であり、選手権予選には藤沖が戻ってこないことが確定した証でもあった。 


【高踏高校・高校サッカー選手権県予選登録メンバー表】

1. 鹿海 優貴  GK  193/76

2. 曽根本 英司 DF  176/66

3. 石狩 徹平  DF  173/64

4. 林崎 大地  DF  179/65

5. 颯田 五樹  FW  168/62

6. 陸平 怜喜  MF  173/68

7. 瑞江 達樹  FW  172/67

8. 天宮 陽人  MF  177/68

9. 園口 耀太  MF  170/70

10. 道明寺 尚  DF  180/71

11. 立神 翔馬  DF  169/73

12. 須貝 康太  GK  178/69

13. 樫原 卓也  DF  165/65(二年)

14. 田中 耕哉  MF  170/66(二年)

15. 武根 駆   DF  178/71

16. 戸狩 真治  FW  169/64

17. 芦ケ原 隆義 MF  170/67

18. 佐藤 将   FW  171/66(二年)

19. 篠倉 純   FW  188/78

20. 鈴原 真人  MF  174/67

21. 南羽 聡太  DF  177/70

22. 久村 護   DF  175/69

23. 櫛木 俊矢  FW  179/71

24. 後田 雄大  GK  174/66

25. 稲城 希仁  FW  173/69


監督 真田順二郎

役員 天宮陽人

役員 甲崎恭太

役員 卯月亜衣

役員 高梨百合

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