4月7日 14:00
ゴールキーパーとフォワード。
このポジションを兼任した選手がいないわけではない。
かつてメキシコ代表のゴールキーパーだったホルヘ・カンポスのように前半と後半でユニフォームを変えて、ゴールキーパーと点取り屋を兼ねた者もいる。
また、ゴールキーパーは長身の者が多いから、負けている試合の終盤にセットプレーで上がってくるケースもある。
鹿海も190を越える長身だから、そういう起用はあったのだろう。
とはいえ、ゴールキーパーは専門職が強いポジションであり、専念できるなら専念した方がいいし、それが当然と思われている。
陽人にとっても、その理念は共通している。
だから、この二つのポジションを兼任という宣言には驚きがあった。
「元々はゴールキーパーなんですけどね、中学二年、三年の間はフォワードをやっていました。フォワード心理を理解した方がゴールキーパーにもプラスになるって」
「なるほど」
「そうしたら、結構点を取ってしまってフォワードとしてしか声がかからなくなったんですよ」
若干の自慢めいた響きがあった。
もちろん、弱気よりは強気の方が歓迎だ。
かろうじてチームが作れる人数しかいない状況では、特に。
「鹿海君はゴールキーパーをやりたいわけ?」
「どっちでもいいですよ。チーム状況によりますかね。レギュラーに近い方がいいです」
「レギュラーは横一線だね。鹿海君も知っていると思うけど、藤沖先生が事故でいないから、当分はレギュラーも何もないと思う」
話の流れで、陽人は現状とチーム指針について説明した。
鹿海はポカンとした顔で説明を聞いていた。
「そんなこと、本当にできるのか? 普通の練習でもいいんじゃないの?」
陽人が先輩ではなく同学年と分かったことで、鹿海の話し方はフランクなものに変わった。
「普通のことをやるとしたら、まともな監督もいないんだし完全に停滞するよ。君が監督として何か妙案があるというのなら立場を代わるけど」
「じ、冗談じゃないよ」
鹿海は慌てて否定した。
「監督なんかやったらレギュラーが遠くなるじゃないか」
「現時点でいえるのは、ゴールキーパーも前からプレーする予定だから、フォワードとしてのスキルがあるなら、君はチームの需要には則している」
「でも、失点が増えそうだな」
「それは仕方ない。あれもこれもと欲張るのは無理だからね。完成すれば、一貫した戦い方になって失点も落ち着くかもしれないけど、そこまでは大変だろう。ただ、それも踏まえて、思いっきり上のレベルにチャレンジしたい」
陽人の説明に、鹿海は大きく頷いた。
「分かった。監督やコーチがいないっていうのは初めてだからビックリしたが、一年全く違うことにチャレンジするのは面白そうだ」
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